【第2回】つながりのある関係性を高める 農業体験の薦め


農作業で感じる人とのつながり

先日、初回の農業体験を開催する前段で、はじめての協働の仕事として防鳥網張りに参加しました。20アールの畑全面に青い網を張る作業を20名ぐらいの有志で行いました。自分たちの区画はほんの一部ですが、全員の畑のために力を合わせて、若谷農園の園主若谷真人さんから説明を受けた後に作業を開始。もう何年もやっている参加者から初心者へやり方が伝授されて、「去年はどんな様子だった」とか、「今年はどうだ!」とか教えてもらうことで多くの参加者とコミュニケーションをとることができ、防鳥網を通じてみなさんとつながったように感じました。

次の回のはじめに、若谷さんから防鳥網張りの報告がされ、印象的だったのが「参加できなかった方は参加した方々に感謝の気持ちを伝えてください。」と言っていたことです。その時、以前読んだ内山節(たかし)の『自然・労働・協働社会の理論-新しい関係論を目指して』* の“仕事”と“稼ぎ”の違いの一節を思い出しました。

「仕事」と「稼ぎ」の違い

内山によると、群馬県の上野村では、みんなで繰り出して山里の保全のための働きは“仕事”と呼ぶ。これは、山林の力を維持・向上するための働きであり、現金収入を伴わない。そこに住むコミュニティの営みを“仕事”と呼び、その一方で、自分たちが暮らしていくために必要な現金収入を目的とした働きを“稼ぎ”と呼ぶ。

まさに防鳥網張りの仕事は、「はじめてのコミュニティの営みとしての“仕事”だな」と実感しました。また、コミュニティにおいて「他者と親密な関係性を築いている⼈は、幸福度が⾼い」ということがディナーとセリグマン*の 研究結果から分かっています。

他者とのつながりと幸福度の関係性

具体的には「⼀⼈で過ごす時間が⽐較的少ない」、「誰かといる時間が多い」、「関係性の評価が⾃⼰・他者共に⾼い」という関係性の違いが幸福度に影響することが分かっています。

更にビュイトナー*等 の沖縄の百歳⼈(センテナリアン)の調査でも1996年に世界保健機関が「世界⼀の⻑寿地域」として指定した沖縄県 ⼤宜味村(おおぎみそん)の⻑寿の秘密を解き明かす研究の中で、「⼈とつながる、家族を最優先にする」といった他者との関係性があげられていることから、人との関係性を高めることが長生きの秘訣になりことが分かっています。

つまりは、他者と関わりを持つことは長生きにつながると言えるというわけです。そんな関係性が高まる農業体験に参加してみませんか?
次回は「デュアルライフ」をテーマにお話します。


注釈

*内山節(1989)『自然・労働・協働社会の理論-新しい関係論を目指して』-農山漁村文化協会
*エド・ディーナー博⼠イリノイ⼤学⼼理学教授。ドクター・ハピネスとして知られ、アメ リカで幸福度について35年間以上研究。マーティン・セリグマン博士ペンシルバニア大学心理学教授。うつ病異常心理学に関する世界的権威で、学習性無力感の理論で有名であり、娘の事故を機にネガティブさよりもポジティブさに関心を向けることが幸福のカギだとみなすようになり、ポジティブ心理学の創設者の一人とされるようになる
*ダン・ビュイトナー著 ブルーゾーン『世界の100歳⼈(センテナリアン)に学ぶ 健康と⻑ 寿のルール』

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