苗の引っ越しに要注意

2021年5月6日(木)

苗の引っ越しに要注意




こんにちは、モリモリです。
今日は野菜の苗植えについてお話します。種から畑にまくのではなく、なぜ苗に育ててから畑に植え替えるか知っていますか?苗まで育てることでしっかりと育つ理由があるのです。

〇苗の畑デビュー

タネから育てた苗を畑に植え替えることを、定植といいます。植え付けという言い方をすることもあります。温室で温度管理や水管理をして大事に育ててきた苗を畑にデビューさせることです。



小さい苗は抵抗力も弱くデリケートですので、しっかりと体を作ってから畑に移して成長を促進させる作業です。人間も大人になって生活力がついたてきたら、定住するようにイメージすると身近に感じられるでしょうか。




〇どうして苗をつくるのか?

植物はタネを植え、条件が整えば発芽して成長してきます。では、なぜ苗を育てることをするのでしょうか。理由は3つあります。

発芽には、空気・水・温度の3条件が必要となります。畑に直植えするのに発芽適期まで待っていると、季節が後ろ倒しになってきます。その分収穫がおくれることになります。また、植える場所は、成長して葉を拡げる範囲になるので、早い時期から場所をとることになってしまします。


苗づくりでは、省スペースで温度管理や水管理をしながら育てますので、2~3か月ほど、別の場所で観察しながら苗を育てることができるのです。自然の中の寒気や虫たちの攻撃から守りながら子育てをするようなものです。つまり、いきなり畑にタネをまくよりも、発芽して苗が自立成長できるようになるまで、人間の手で管理することで野菜がスクスクとよく育つので「苗づくり」をするのです。



〇良い苗と悪い苗の違い

こうして、しっかり成長した苗は、定住して新たな環境になじむとグンと力を発揮します。ホームセンターなどで、苗も安く手に入るようになりました。生き物ですので大地にデビューすれば自分の力で生きていきますが、強い苗と弱い苗では、その後の成長に違いが出てきます。



良い苗の見分け方は、茎が太くまっすぐなもの、節が間延びしていないもの、葉のバランスが良いもの等を目利きすると良いでしょう。生育の過程で余計なストレスがかからずに、温度や水の過不足が無い状態で育ってきた結果が表に現れている状態だからです。このように考えると苗づくりはとても難しくデリケートな作業なので、そう安くはできるものでありません。



この価値はやってみなければわからないものでしょう。あまりにも安い苗は疑ってかかってみる方が良いかもしれません。




〇苗植え作業の注意点

本来デリケートな苗を、畑デビューさせ、環境になじませて自分の生き方を貫いてもらうために、定植作業は大事な節目です。単に穴を掘って移し替えれば良いというものではありません。以前、体験農業参加者の方々に苗の植え付け作業をやってもらったことがありますが、想定外の場面を目にしてしまいました。



手順はお伝えしたのですが、大事なところを聞いていなかったり、やってみると作業が先行してしまうことがあることが分かりました。伝え方を工夫しなければと思った次第ですが、農作業をあまりやったことがない人にとって「苗植え」とは単に「苗を土に埋める」作業という認識なのだと感じました。


定植で大事なことは、定住する新しい環境(ポット→畑の土)にスムーズに移行させるということです。以下の手順に沿って苗植えをすることで、苗もしっかりと畑の土に馴染んでくれます。

  1. ポットを水に浸けて根鉢に水分をいきわたらせる
  2. 定植場所に穴をほり、苗を穴に入れて表土と高さを揃える(基本は浅植えを推奨)
  3. 穴に水をたっぷり入れる
  4. 茎を指で挟んでポットを裏返し、根鉢を崩さないように穴に置く
  5. 周囲の土を根鉢の脇に寄せて、全体を押さえて圧着する


以上なのですが、後から見渡してみたところ、穴を深く掘りすぎて沈みそうになっているものや、古墳のようにこんもりと土をもられている姿を目撃してしまいました。ポットの苗は、タネから発芽してきて今まで生きてきている環境です。土より下が根の部分で水分をとり栄養を吸収する役割のところです。


こちらは少し深植えになってしまっています。




土から上は空中で呼吸をする役割のところです。植えた時に茎の部分まで土をもってしまうことは、窒息させてしまうことにつながり、まさに古墳に生き埋め状態になってしまいます。


深く植えすぎるということは、土より下に根を格納してしまうことになり土中の水分が保たれすぎています。水没状態で呼吸がしにくくなりますし、新しい環境になじんで根を張り巡らそうという意欲を削いでしまうことにもなります。浅植えにすることで根を下へ周囲へと張れるような環境状態に置く方が、自分のちからで新しい土地になじむことになります。

春の苗植えは「浅く植える」が基本と覚えましょう。


単に作業手順や、浅植え、深植えということばを知るのではなく、理由とともに作業体験をすると、より目の前の作業が自分ゴト化して楽しくなりますよ。農業は農家さんが長年の経験と感覚でやっているというイメージもありますが、実はロジカルに組み立てられ、理論化できるものです。なぜこの作業が必要なのか?ということに興味を持って農作業をしてみると、他の野菜を作る時にも応用できるイメージが湧いたり、クリエイティブな感覚も養われるでしょう。


というわけで、今日は苗植えの話でした。
それではまた。

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