ほったらかしで野菜は育つ?

2021年4月18日(日)

ほったらかしで野菜は育つ?



こんにちは、モリモリです。
今日はほったらかしで野菜づくりができないか・・・
という問いに対して私の見解をまとめてみようと思います。このコラムを読めば時間や手間をかけずに美味しい野菜を作るコツがわかります。



さて、MFCメンバーの中にも耕したり雑草抜いたり、毎回肥料をやったりするのはめんどくさい。別にやらなくても育つのでは?雑草なんて何もしなくてもボーボーなんだから、同じ植物である以上放置で育たない方が不条理だなんていう不届者?がいます。


「めんどくさい」が「楽しい」になるのが農業の真髄だと言ってあげたいところですが、今日のところはその問いに答えたいと思います。


畑の野菜たちを放置しておいたらどうなるか?

何も手を加えずにほったらかしをしておいたらどうなるのでしょう?まず畑の状態はどうなるのか想像してみたいと思います。毎年4月に入る頃には、整地していた畑に雑草が生えだしてきています。しばらく使っていなかった畝などは背の高い雑草がびっしり生えています。



そのまま放置すればいずれ雑草園になっていくでしょう。山林の雑木林化が問題視されていますが、耕作放棄地の荒れ地化も懸念される現象です。一旦整地した畑に、タネあるいは苗を植えて、ほったらかしにしておくとどうなるでしょう。



例えばジャガイモなどは、芽がいくつもでてきて茎が伸び伸びと育ち葉が茂ってきます。塊茎をつくり葉は萎れていきますが季節がくれば土中の芋から芽が出ていきます。収穫した場合でも取り残した小さい種芋からもどんどん増えていきます。ジャガイモの雑草化は多品種で畑を使いまわしている生産者にとっては実に手ごわい相手です。



トマトやキュウリのような茎や蔓を伸ばす植物も、脇芽が伸びて密林のような状態になるでしょう。美園ファーマーズ倶楽部(MFC)の畑でもこのような野菜たちを見かけます。とは言え花も咲いて実もつけているようなので、育つといえば育つといえますし、収穫もできているようです。



ではそのままそのまま放置していくとどうなるか?トマトは熟し実を落とし、実生から成長していきます。里芋も冬越しして芽を出していきますから、そのまま種としての子孫繁栄はしていくでしょう。




ただしそれは、逞しい雑草たちとの生存競争に勝たなければなりません。
結論から言えば、ほったらかしでも育ちますが、ビジネスとしての農業を考えたときに生産者である農家にとって収穫量が不安定になりうる「ほったらかし」などはそもそも選択肢としてあり得ないということから、農家さんがやる体験農業でもすべからく雑草取りや日々の細かい栽培管理が前提になっているといえます。



ただ、農業をビジネスとしてやるのではなく、土や自然に触れて癒されたい(最近はアグリヒーリングという)など、農業の付加価値を暮らしの中に気軽に取り入れたいという人はほったらかし農法は最適化もしれません。まずは簡単に楽しめるやり方から農業に触れてみるというのは大いにありだと思っています。


下の写真はMFCの畑で実践している「ほったらかし」区画です。正式には耕さない畑である「不耕起栽培」というやり方です。





野菜たちの生い立ちを考えると「答え」が見える

里芋、ジャガイモ、トマト、キュウリを例に挙げてみましたが、それぞれの原産地をたどってみると、里芋はインドネシア辺りの生まれで温暖で雨が多い気候を好みます。夏場にバケツでじゃぶじゃぶと水をあげると大きな芋が育ちます。原産地は、日本のような乾燥した畑地ではなく水につかることで雑草に囲まれることなく里芋が主役で生きられる環境だったのでしょう。



トマトはアンデス高地が原産地ですので、やせた土壌で生きてきた植物です。蔓や葉の成長も日本での気候よりゆっくりで、その分、数少ない葉を拡げて光合成を行っていたのかもしれません。故郷では、いわばほったらかしで命をつないできた作物たちが、日本の畑にやってきて日本の気候にあわせて栽培されていることで収穫をもたらせてくれているわけです。



つまり、いわゆる一般的な野菜は日本原産でないものが多く、原産地と環境がことなるので、ほったらかしでは育ちにくい性質があるのです。なので手を加えて栽培管理が必要な状態になっています。ほったらかし農法が真っ向から通用するのは日本原産の野菜であると言えるでしょう。うど、ふき、自然薯などが挙げられます。



それとは別に、手軽なほったらかし農法としては地這キュウリなどがあります。地這キュウリはネットを張らずに蔓を上に伸ばす必要がないので、資材を必要としませんし誘引の手間もかかりません。葉が地面を覆うので地表の乾燥が少なく葉が太陽光を受ける面積が拡がる等のメリットもあります。



一方で、ネット栽培のキュウリは蔓性植物の性質によりネットに巻き付き成長が早く、重力に垂れ下がることで曲がりが少ない実になるというメリットがあります。逆に言えば地這キュウリは曲がりが多く、葉に隠れて色も白いという特徴があります。これも農業ビジネスとして考えたときに買われやすい見栄えを意識したらほったらかしにはできない。となったからでしょう。




栽培管理とは植物が大きく育つために手を差し伸べること

植物たちは自ら成長し命をつないできていますので、ほったらかしにしておいても成長していくでしょう。栽培管理とは、植物のもともと持っている生きる力を引き出し、サポートすることで収穫物を増やす行為なのです。



例えばトマトは葉が茂りすぎて太陽の光が届かないようなときに、葉を剪定して太陽の光を効率的に受けて光合成を促進させます。トマトのわき芽を摘まないと成長点が大量になることでエネルギーが分散してしまい、大きな実を付かなくなるからなんですね。



これを防ぐためにわき芽を摘むことで成長点へ届ける栄養を集中させます。こうした栽培管理もほったらかししてしまうと、本来は良い大きさに育ち、美味しくなる野菜も中途半端に不完全な状態で収穫することになってしまうことが多いのです。



美味しくて立派は野菜を作りたい人にとっては、やはりほったらかし農法はおすすめできないと言えます。




“ほったらかし”の範囲をどの程度にするかがコツ

一言でほったらかしといっても、人によって定義が異なます。何を目的にほったらかしにするのかということになるでしょう。生き物は環境に適応しながら生きていくことは可能です。一方で良好な状態で生育するためには、整った環境が好適です。



人間にとっては効率的に収穫物を得るためにほったらかさずに、世話は必要だということです。ほったらかしと収穫量はせめぎあいの関係にあるといえるでしょう。親は無くとも子は育つとは言いますが、それでも子育ての際に見守りサポートから手を抜くことがないことから想像がつくように、生きる力を最大限にいかす計画と気遣いは必要になるのだろうと思います。



そう考えると、野菜の栽培と人間の子育ては似ているかもしれませんね。ほったらかしすぎてもダメ。選定のハサミを入れすぎても、自主性や主体性、個性が育たない。なんとも面白いものです。


私はココをほったらかす

さて、ここまで話してきたように、野菜を見た目良く立派に育てるには「完全放置」ではさすがに限界があります。でも、そうは言ってもなるべく手間なく美味しい野菜を作りたいという人は多いと思います。



私は野菜の一部をほったらかしたり、作業を一緒にまとめることで効率化を図っています。例えばきゅうりのネットを片付けるときに時間をかけないように、枯れて乾燥させてから蔓を引き抜くなど植物の生長サイクルに合わせた作業をまとめて行うことや、ジャガイモの土寄せのタイミングでわき芽取りをするなど、作業を組み合わせて行うことで手間を省くようにしています。



まとめると、私にとってのほったらかしとは、ただただ放置をするということではありません。畑の土地の状態・気候・栽培している植物たちの特徴を理解したうえで状態を観察し、現状をあるがままに受け入れながら、植物たちが最も生きやすいような環境を提供すること。そのためにほったらかした方が効率的になる場合もあります。



大切なことは作物の特徴や畑の全体計画、気候の予測や作業段取りなど、様々なことを組み合わせて考え実行することでしょう。ほったらかしを単なるズボラでなく、楽しく農作業をするためには、知恵を働かせる必要があるのです。いずれ省エネ栽培(楽チン農法)についてもまとめてみたいと思います。




というわけで、今回はほったらかし農法についての話でした。
それではまた。

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