2026年11月2日(月)
米余りは2028年も続く?|備蓄米を買い戻しても在庫は最大257万トン
2027年産の主食用米を48万トン減らしても2028年6月末の民間在庫は223万〜257万トンです。適正とされる180万〜200万トンの上限を下回る見通しは出ていません。
減産すれば米余りは1〜2年で片づくと思っていました。農水省が2026年10月30日に示した需給表を引き算で読むと見込みは外れました。持ち越した在庫のほうが新米の減産幅よりずっと大きかったからです。
223万〜257万トンは予測ではなく試算です。農水省が前提を置いて引き算した結果で作柄と需要が動けば数字も動きます。
米余りは2028年も続く?|農水省が示した在庫の見通し
農林水産省は2026年10月30日に公表した基本指針で2028年6月末の民間在庫を233万〜267万玄米トンと見通しました。
備蓄米を10万トン追加で買い戻すと見込んだ場合は223万〜257万トンです。報道で「最大257万トン」と伝えられたのはこちらの上限にあたります(共同通信)。
2028年6月末の民間在庫は最大257万トン
指針の需給表は上から下へ引き算で読めます。持ち越した在庫に新米を足して需要と備蓄米の買い戻しを引くと翌年6月末の在庫になります。
幅が出るのは需要の置き方に幅があるからです。需要は直近5年の1人あたり消費量の平均値と最大値の2通りで置いています。上位と下位の差は17万トンです。
2027年産の生産量693万トンは2027年7月〜28年6月の需要見通しの下限に合わせた数字です(農水省)。需要が下限の693万トンで推移すれば新米で需要がちょうど埋まり持ち越した在庫には手が付きません。
適正とされる180万〜200万トンとの距離
共同通信は民間在庫の適正量を180万〜200万トンと伝えています。
見通しの下限の223万トンでも適正量の上限を23万トン上回ります。上限の257万トンなら57万トンの超過です。
2026年6月末の243万トンは農水省の調査で過去最大でした。2027年6月末の見通しは250万〜267万トンで下限でもこれを超えます。
上限どうしを並べると2027年6月末も2028年6月末も267万トンで在庫は1年間まったく減りません。
最も減る組み合わせでも1年で17万トンです。仮に2027年6月末の下限250万トンから毎年17万トンずつ減るなら200万トンへの回復は2030年6月末です。備蓄米の追加買い戻しを除いた私の単純計算です。
米余りが長期化する理由|減産しても民間在庫が減りにくい仕組み
2026年6月末の民間在庫243万トンは1年分の需要の約36%にあたり新米の減産幅48万トンの5倍です。
生産量と消費量のずれ|741万トンに対して695万〜712万トン
2026年産の主食用米等は741万玄米トンの見通しで、2026年7月〜27年6月の需要見通し695万〜712万トンを29万〜46万トン上回ります。
需要の側も弱くなっています。2025年7月〜2026年6月の需要実績は683万トンで前年の713万トンから30万トン減りました(農水省)。
農水省は需要が下振れした背景を2つ考えています。枠外の民間輸入が増えて国産米の需要が減ったのではないか。米不足への不安が薄れて手持ちの在庫が増え買い控えが起きたのではないか。どちらも「のではないか」と書かれた仮説です(農水省・2026年7月)。
枠外輸入は令和7年度に約11万トンありました。カルローズ米を含む輸入米の中身はカルローズ米と国産米の違いに書きました。
1人あたりの消費量で見ると2025年7月〜2026年6月は48.7kgで直近5年平均の49.9kgを1.2kg下回りました(精米・インバウンド需要を除く)。全国の人口に掛けると約15万精米トンになる計算です(筆者の概算)。
需給調整の歴史|2018年産の配分廃止と新しい水田政策
行政が生産数量目標を割り当てる仕組みは2018年産から廃止されました(農水省・令和元年度食料・農業・農村白書)。
廃止後は産地と生産者が需要を見て作付けを決めます。農水省は都道府県別の作付意向を聞き取って公表し判断の材料にしてもらっています。
強制のない仕組みでは全員が同じ価格を見て同じ判断をしたときに余りが出ます。2025年産の主食用米は747万玄米トンで前年産より68万トン増えました。米価が上がった年に作付けを増やすのは需要を見た判断として自然だったと私は思います。
2027年産からは新しい水田政策が始まります。生産性の向上に着目して品目ごとに交付金を出す内容で単価はまだ明らかになっていません(JAcom)。
米余りが農家と食卓に与える影響|価格と食料自給率
令和8年産米の9月の相対取引価格は全銘柄平均で玄米60kgあたり21,293円と前年同月より42%安くなりました(農水省・2026年10月16日公表)。
前年同月は36,895円でした。2年前の同じ月と比べても1,407円(6%)安い水準です。
相対取引価格は卸売段階の取引価格で運賃と包装代と消費税相当額を含みます。農家が受け取る金額とはそのまま比べられません。
生産者への影響|価格と在庫を抱える負担
令和6年産米の全算入生産費は個人経営体の平均で玄米60kgあたり15,814円でした(農水省・米生産費)。21,293円との差は約5,500円です。ただ前者は卸売段階の価格で運賃や包装代が入るため農家の取り分はもっと小さくなります。
相対取引価格の前年同月比は58%です(21,293円÷36,895円)。農家の売上がそのまま58%になるわけではありませんが向きは同じです。
価格が下がる年に農家の帳面を重くするのは売値より機械代などの固定費です。作付42ヘクタール規模の稲作で農機具の減価償却が年約490万円という試算は農機具の減価償却の記事に書きました。
在庫が積み上がる負担は卸売や集荷の側にも出ます。販売段階の在庫は2026年6月末に51万玄米トンで、例年同時期の30万〜40万トンを上回りました(農水省)。保管と資金繰りの重さにつながると私は見ています。
消費者への影響|店頭の値段と田んぼの先行き
家計には値下がりとして届きます。カルローズ米と国産米の違いの記事で引いたスーパーの週次平均では2026年8月3〜9日の国産米が5kgで3,220円と前年の同じ週より13.8%安い水準でした。
安さは担い手の減少と並んで進んでいます。米を販売目的で作る経営体は2025年農林業センサスの概数値で53万3千となり5年で25.3%減りました(農水省)。
米が余る年は主食を自前でまかなえている裏返しでもあります。ただ田んぼを維持できる農家が減れば余っている年の安心は長く続きません。食料安全保障と農業の記事でスイスと日本を比べました。
食料自給率への波及|米の消費減が響いて37%
令和7年度のカロリーベース食料自給率は37%で前年度より1ポイント下がりました(農水省・2026年8月7日公表)。農水省は下がった要因として米の消費量の減少と民間在庫量の増加を挙げています。
米余りと自給率の低下は同じ出来事の表と裏のようです。私が読んだ公表文では輸入米の増加は要因に挙がっていません。
生産額ベースの自給率は66%で前年度より2ポイント上がりました。米や畜産物の国内価格が上がって生産額が増えたためです(農水省)。数量で見るか金額で見るかで動きが逆になります。
米余りへの対応|非主食用米への転換と備蓄米の買い戻し
農水省は2027年産の非主食用米の生産見通しを109万玄米トンとし、主食用の作付面積を136万haから128.8万haへ減らす必要があるとしています(JAcom)。
非主食用米109万トンの内訳|飼料用米40万トンが最大
最大の飼料用米は家畜のえさに回る米です。加工用米は味噌や米菓の原料になる米で米粉用米はパンや麺に使う米です。
輸出用米は10万トンで全体の約9%です。在庫243万トンに対して輸出で余りを吸収する構図にはなっていません。
転換が進むかは支援の水準しだいです。新しい水田政策の単価は未公表で現行以上の水準がなければ転換は進まないとJAcomは指摘しています。2026年7月の共同通信は飼料用や加工用への転換が進んでいないと伝えていました。
備蓄米の買い戻しは米余りを減らすのか?
減らす側に働きますが規模は243万トンの在庫に比べて小さい動きです。政府備蓄米の買い戻しは民間の米を国の備蓄へ移すもので需給表では民間在庫から差し引かれます。
令和7年産米21万トンの買い戻しは決定済みで表1の数字に入っています。追加で10万トンを買い戻すと2028年6月末の上限は267万トンから257万トンに下がります。
備蓄の回復も目的です。政府備蓄米は2025年3月末の96万トンから売渡しで減り2026年6月末は32万トンでした(農水省)。備蓄の適正水準は6月末で100万トン程度とされています。
追加の買い戻しは10月25日現在の予想収穫量など今後の需給を見定めて決めると指針は書いています。災害と長雨の影響を見極める必要があるためです。
試算は外れるのか?|2026年の見通しは在庫の多い側に外れた
前例があります。2026年3月の見通しは同年6月末の民間在庫を221万〜234万トンとしていましたが実績は243万トンでした(農水省)。
外れた向きは在庫の多い側です。需要の実績が683万トンと3月の見通し691万〜704万トンより8万〜21万トン少なかったのが主な理由です。
2027年産の目安693万トンも需要の下限に合わせてあります。仮に需要が昨年並みの683万トンなら693万トンを作ると在庫が10万トン増えます。備蓄米の買い戻しを除いた私の単純計算です。
もう1つの不確かさは作柄です。2026年産の741万トンは9月25日現在の予想収穫量がもとで災害や長雨の影響は10月25日現在の数字で見極める段階です。
農水省は2027年産以降の見通しを非主食用米も含めた用途別に分けて上振れとベースと下振れのシナリオで示す方向を検討しています(2026年7月の資料)。
家庭菜園への影響|米が余る年に畑と食卓でできること
米が余る年に家庭菜園でできることは稲わらを敷きわらに使うことと米を食べることと地元の田んぼとつながることの3つです。
稲わらは家庭菜園の敷きわらに使える?
使えます。畝の表面をわらで覆うと土の乾燥と泥はねと雑草を抑えられます(ホンダ・マルチングの解説)。
稲わらは刈った草より分解が遅く1作のあいだ持ちます。使い終わったら土にすき込めます。夏野菜の株元に敷く使い方はオクラの株元に敷きわらをする使い方に書きました。
11月の畑なら玉ねぎの苗の株元にも敷けます。
手に入れる先は農家ごとに違います。稲刈りで細かく刻んで田んぼにすき込む人もいれば束ねて取っておく人もいます。分けてもらえるかは持ち主に聞くのが先です。ホームセンターや園芸店でも売られています。
ご飯を増やせば米余りは解決する?
解決はしませんが向きは合っています。1人あたりの消費量が直近5年平均より1.2kg少ない分は全国で約15万トンです。
1.2kgは1合(約150g)で8回ぶんです。全員が年に8合ぶん多く食べても約15万トンで、2026年産の需給のずれ29万〜46万トンの3分の1から半分ほどにしかなりません。
家庭の消費で需給のずれは埋まりません。それでも買う米の産地と店を1つ決めておくと価格が動く年にも迷いません。
地元の田んぼとつながるには?
バケツ稲で稲の一生を見て地元の田植えや稲刈りに加わり買う先を直売所や産直にそろえる流れはバケツ稲から地元の田んぼへ進む流れに書きました。
さいたま市の田んぼの生き物と農業体験は見沼田んぼの動植物ガイドにまとめました。
書き始める前の私は減産が決まれば米余りは1〜2年で片づくと思っていました。引き算で読むと持ち越した在庫が先に立ち2028年6月末でも223万〜257万トンと適正量に届かない見通しでした。一方で2026年3月の見通しは在庫の多い側に外れました。数字は固定の未来ではありません。
- 農林水産省「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」(令和8年10月)
- 農林水産省 農産局「米の需給見通しについて」(令和8年7月・参考資料1)
- 農林水産省「令和8年産米の相対取引価格・数量について(令和8年9月)」(令和8年10月16日)
- 農林水産省「令和7年度食料自給率について」(令和8年8月7日)
- 農林水産省「令和元年度 食料・農業・農村白書」(米の生産数量目標の配分廃止)
- 共同通信「28年6月末の民間在庫、最大257万トン」(2026年10月28日・Yahoo!ニュース配信)
- 共同通信「27年コメ、48万トン大幅減産 農水省、非主食用1.6倍」(東京新聞配信)
- 共同通信「コメ民間在庫最大の243万トン 適正量大幅超過、価格下落加速も」(2026年7月24日・秋田魁新報配信)
- JAcom「27年産主食用生産量 693万tが目安 非主食用に109万t 米の需給見通し」(図表2と新水田政策の数字。農水省の資料の転載ではなく報道)
- ホンダ「マルチング」の解説(わらで畝を覆う効果)
土に触れる一日から
はじめてみませんか?
美園ファーマーズ倶楽部(MFC)では、ライフスタイルやご興味に合わせて選べる3つの農体験プランをご用意しています。
「土に触れる時間」と「自分で育てる楽しみ」を、ぜひ一度体験してみてください。
関連記事

ベジトラグで「育てて食べる」暮らしへ|初心者にうれしい魅力と始め方
ベジトラグ(ホームベジトラグS)は高さ約80cmの木製プランター。かがみ込まずに世話ができ、庭やテラスに眺める菜園をつくれます。土は約130L必要で入れた後は動かしにくいので、置き場所と準備を先に決めるのがコツです。

エチオピア稲作支援3.6億円|国内の米農家に回すべきか数字で確かめた
エチオピア稲作支援の3.6億円は農林水産関係予算の約0.016%で、国内の農業経営体1つあたり約430円です。ただ水田活用の交付金等は前年度から118億円減っており、数字を公式資料で確かめました。

カルローズ米と国産米の違い|2025年に民間輸入が95倍になった理由
カルローズ米を含む米の民間輸入は2025年に9万6,834トンと前年の95倍でした。ただ国産の収穫量の約1.3%です。米農家の平均年齢と赤字の数字を公式統計で確かめ、家庭菜園の米づくりまで書きました。

農機具の減価償却だけで年500万円|米価が下がっても機械代は下がらない
作付30ヘクタール規模の稲作で農機具の減価償却は年約490万円、修繕費まで含めると776万円。国の生産費統計と受託料金調査から、米価が4割下がっても動かない固定費をたどります。
よく読まれている記事

カボチャの種類・品種一覧12選|甘さ・用途別おすすめランキング【比較表つき】
カボチャの種類は西洋・日本・ペポの3系統。定番のえびすから栗より甘い雪化粧、生食できるコリンキー、ハロウィン用の観賞品種まで、代表12品種を甘さ・食感・用途の比較表とおすすめランキングで美園ファーマーズ倶楽部(MFC)が解説します。

知っておきたい種いも危機|米国産ジャガイモ輸入がもたらすシストセンチュウリスクと私たちにできること
米国産生ジャガイモの輸入で何が議論されているのか。シストセンチュウが北海道の種いも産地(種いもの約97%)にもたらすリスクと食料自給率とのつながり、家庭菜園でできることまで、公的データと出典をもとに解説します。

じゃがいもの種類・品種一覧15選|食感・用途別ランキング【比較表つき】
じゃがいもの品種は粉質・粘質・中間の3タイプ。男爵いも・メークインの定番から、黄金のインカのめざめ、紫のシャドークイーンまで15品種を、食感と向く料理の比較表とランキングで美園ファーマーズ倶楽部(MFC)が解説します。

消費税減税で農家に売上5.4%給付案|家庭菜園と食卓への影響
消費税減税で免税農家の手取りは税抜800万円なら56万円減る計算です。政府は売上高5.4%の給付を調整中ですが全額は埋まりません。報道の中身と家庭菜園・食卓への影響を整理しました。





