木の升にこんもり盛った白米の粒。カルローズ米と国産米のどちらを選ぶかは食卓の入口の話になる

カルローズ米と国産米の違い|2025年に民間輸入が95倍になった理由

2026年10月2日(金)

カルローズ米と国産米の違い|2025年に民間輸入が95倍になった理由

農業コラム|米と食料自給

2025年の米の民間輸入は9万6,834トン。前の年の95倍でした。

「国産米ではなくカルローズ米を使う企業がある」。そんな投稿が米農家への共感と一緒に広がりました。畑にいる人間として気持ちは分かります。それでも怒りを向ける前に確かめておきたい数字がありました。

扱うのはカルローズ米と国産米の違いと米農家の年齢と収支、そして家庭菜園でできる米づくりです。
木の升にこんもり盛った白米の粒。カルローズ米と国産米のどちらを選ぶかは食卓の入口の話になる

輸入米が増えたのは事実です。一方で企業が国産米を見捨てたのかは数字だけでは決まりません。投稿には「米農家の平均年齢は70歳」「95%が赤字」という言葉も添えられていました。農林水産省や財務省の公表値にあたると確かめられた話とそうでない話に分かれました。

公式の数字で追えなかった話は追えなかったと書いています。

カルローズ米とは|国産米との違いと輸入が増えた背景

カルローズ米は米国カリフォルニア州で作られる中粒種のジャポニカ米です。

カルローズ米の特徴は粒の大きさと炊き上がり

粒の形は日本の短粒種と長粒のインディカ米の中間にあたります。国産米よりやや大きく細長い見た目です(東洋経済オンライン・2025年)。炊き上がりはふっくらというよりパラッとして軽くアルデンテのような食感です。粘りが少ないので炒飯・ピラフ・リゾットに向くと紹介されています。

丸みのある粒と、少し大きめの粒の白米を並べた2枚の小皿。カルローズ米と国産米の粒の違いを比べるイメージ

味の主張が強くないぶんソースや出汁と合わせやすい米でもあります。そのまま白ご飯で食べておいしい国産の銘柄米とは得意な場面が違います。

日本ではこれまで主に飲食店で使われてきました。外食チェーン・給食・ホテル・加工食品メーカーなどが採用してきた米です。最近はスーパーの棚にも並びます。

国産米との価格差はどれくらいか

2025年の報道には大手スーパーが4kgで2,894円で売る例が挙がっていました(東洋経済オンライン)。5kgに直すと約3,600円です。一方で2026年8月3〜9日の週のスーパー平均は国産米が5kgで3,220円でした。前年の同じ週より13.8%安い水準です。

年が違う数字を並べただけなので差し引きはできません。ただ国産米の店頭価格が下がったいま、輸入米の割安感は2025年ほど大きくないのではないかと私は見ています。

業務用では価格に加えて決まった品質の米を決まった量だけ続けて仕入れられるかが問われます。国産が品薄になった年に輸入米が候補に入ったのは自然な動きだったと私は受け取っています。

2025年に民間輸入が95倍になった経緯

日本は年77万トンの米を関税なしで輸入する枠(ミニマムアクセス)を持ち、そのうち主食用に回せるSBS方式は上限10万トンです。

この枠の外で民間企業が輸入すると1kgあたり341円の関税がかかります。以前は年間600〜800トン程度にとどまっていました(JAcom2025年9月)。

2025年の民間輸入は9万6,834トンで前年の95.4倍になりました(日本経済新聞、財務省の貿易統計)。7月だけで2万6,397トンが入り、1〜7月の累計6万7,004トンのうち米国産が78.6%を占めています(JAcom)。

関税を払ってもなお安く済んだのは国産米が値上がりしたからです(日本経済新聞)。国産が高騰していなければこの動きは起きなかったと思います。

輸入は国産米の何割にあたるのか

2025年産の主食用米の収穫量は718万1千トンです(農林水産省生産者の使うふるい目幅ベース)。2025年の民間輸入9万6,834トンはその1.3%ほどにあたります。

暦年と産年で区切りが違うので概算の比較です。それでも1.3%という数字だけで国産米が置き換えられたとは言いにくいと感じました。伸びの速さは本物でも量はまだ小さいからです。

図表1|この記事で確かめた3つの区分
確かめられた事実2025年の民間輸入は9万6,834トンで前年の95.4倍
逆向きの事実輸入は国産の収穫量の約1.3%(概算)・用途もチャーハンやピラフが中心
まだ言えないこと輸入が米価の下落や農家の赤字の主因だとは、公表資料から言えない
※ 2025年の民間輸入量は暦年・2025年産の収穫量は産年の数字です。

米農家の現場|平均年齢と収支を公式統計で確かめる

米を販売目的で作る経営体は2025年農林業センサスの概数値で53万3千となり5年で25.3%減りました(農林水産省)。

黄金色に実って頭を垂れる稲穂のアップ。国産米の収穫を支える田んぼの稲

米農家の平均年齢は本当に70歳なのか

基幹的農業従事者は2025年に103万6千人で平均年齢は67.7歳でした(農林水産省、令和7年度食料・農業・農村白書)。農業全体の平均は70歳に届いていません。

稲作を小さく続けてきた層に絞ると印象が変わります。2020年センサスで副業的経営体の基幹的農業従事者は71万人で平均73.9歳でした。70歳以上が72.2%を占めます。副業的経営体は大宗が稲作とされています(農林水産省)。

「平均70歳」は農業全体の平均ではなく兼業で稲作を続けてきた層の姿に近い数字です。

経営体が減る一方で農地が消えているわけではありません。1経営体あたりの経営耕地は3.6haに増え、20ha以上の経営体が面積の約5割を占めるようになりました(2025年農林業センサス)。高齢の農家が引退した田んぼを近くの大きな経営体が引き受ける形が増えています。

米農家の9割以上が赤字という話は確かか

「95%が赤字」という数字は私が探した範囲では農林水産省の公表値に見つかりませんでした。公式の統計で追えるのは平均値です。

農水省の営農類型別経営統計を使ったJAcomの試算(2023年)では、水田作の個人経営体の平均は農業所得が5万1,000円で時給に直すと63円でした。主業経営体に絞ると時給は1,008円で20ha以上の主業経営体では2,476円になります。

粗収益に占める共済・補助金などの受取金の割合は、個人経営の平均で20%と20ha以上の主業経営体で31%でした(JAcom試算)。農業所得にはこの補助金が含まれます。農産物の販売収入だけで見た収支はさらに厳しくなります。

平均は兼業や零細を含むので米農家の姿そのものではありません。ただ規模で収支がここまで変わることは確かです。60kgあたりの全算入生産費も令和6年産で個人経営体が1万5,814円、組織法人経営体は1万2,090円でした(農林水産省)。

2024年は米価が上がって潮目が変わりました。農業簿記ソフトを使う稲作4,254経営の集計では世帯の農業所得が前年の約1.7倍になっています。帳簿をつけている経営に偏った集計で全体の姿ではありません。

2026年産では逆向きに動いています。産地ごとの概算金は玄米60kgで1万2,000円台から2万1,000円までで、前年産より3〜6割低いと報じられています(agri-ja)。概算金は最終の精算額ではありません。それでも個人経営体の全算入生産費1万5,814円を下回る産地があります。

7月の相対取引価格(卸売段階)は玄米60kgで3万2,486円と前年同月比21%高く、概算金とは逆に見えます。前年産を含む取引の価格なので時期のずれがあるとみられます。

米農家の苦境は平均や1年の数字だけでは言い切れません。規模と年で大きく動きます。それでも小さな経営ほど収支が薄いことは確かめた範囲で変わりませんでした。

輸入米は食料自給率にどう響くのか

令和7年度のカロリーベース食料自給率は37%で前年度から1ポイント下がりました(農林水産省、2026年8月7日公表)。

農水省が米について挙げた要因は消費量の減少と民間在庫の増加でした。私が読んだ公表文では輸入米の増加は要因として挙がっていません。

輸入が増え続ければ話は変わります。いま自給率を左右しているのは輸入に頼る比率がもともと高い小麦や大豆や飼料や油の原料だと考えています。主食を輸入に頼ったときに何が起きるかは有事の主食が芋である理由にも書きました。

農業資材の高騰が田植えの時期にどう響いたかは農業資材不足への対処法と相談窓口で書いています。

家庭菜園で米を育てる|バケツ稲から1人分の田んぼまで

バケツ稲は5月上旬に始めて秋に穂が実る家庭菜園でいちばん小さな米づくりです。

バケツ稲でどれくらい穫れる?

バケツ1個で穫れるのはお茶碗1杯に届くかどうかです。JAグループは1989年からバケツ稲づくりセットを配ってきましたが、目的は食料の自給よりも稲の一生を見ることにあります。

バケツ稲の手引きに載る流れは5月に種まき・6月に分けつ・8月に穂が出て・9月に米ができるという順です。

種もみをまくのは5月上旬が目安です。暖かい年なら6月の上旬から中旬に始めても秋に実が入ります(JAグループ)。穂が出る頃までは水を切らさず台風の前には雨風の当たらない場所へ移します。

素手でバケツに稲の苗を植え付ける手元。家庭菜園でできるバケツ稲づくり

家族1人分の米は何㎡で育てられる?

1人が1年に食べる米は約51kgです(令和5年度の食料需給表)。精米で1割ほど減るとして玄米に直すと約57kgになります。

2025年産の全国平均の収量は10aあたり526kgなので必要な田んぼは約110㎡です。33坪ほどにあたります。

ただ水を張って抜ける田んぼと畦と水の確保が要るので貸し農園の畑区画では作れません。全国平均には経験豊富な農家の田んぼも含まれます。初めての年に同じだけ穫れる保証はありません。

1人分の自給を目指すより、バケツ稲で稲の一生を見ることと地元の田んぼの田植えや稲刈りに加わることが現実的な入口だと考えています。

地域の米農家とつながるには?

バケツ1個の稲を育てると袋の米が1粒ずつ穂についていたことを実感します。お茶碗1杯に届かない収量を見たあとだと5kgで3,000円台という店頭価格の見え方も変わります。

STEP 1
バケツ稲で一生を見る
5月上旬に種もみをまき秋に収穫。穂が出る頃の水切れと台風に気をつける
STEP 2
地元の田植えと稲刈りに加わる
各地の体験イベントや農家の呼びかけを探し、手植えと手刈りを一度経験する
STEP 3
買う先を地域に決める
直売所や産直で米農家から直接買い、育てた経験と買う先を同じ地域にそろえる

さいたま市の田んぼの生き物と農業体験は見沼田んぼの動植物ガイドにまとめました。畑の土づくりと道具は家庭菜園の始め方から入れます。

国産米を守る選択|買い方と使い分けの3つの目安

1人が年に約51kg食べる米は買う場所と使い道を先に決めておくだけで国産米への支持を続けやすくなります。

国産米を選ぶときは何を見ればいい?

精米の袋には原料玄米の産地が書かれています。「国内産」か外国の名前か袋の表示で確かめられます。ブレンド米なら複数の産地が並びます。

価格だけで選ぶと外食や惣菜の原料までは見えません。家庭で買う米だけでも産地と生産者の顔が見える店や産直を1つ決めておくと迷いが減ります。

炊きたてのご飯と味噌汁と野菜の煮物が並ぶ家庭の食卓

カルローズ米と国産米は使い分けられるか

使い分けられる場面はあります。粘りが少なくパラッと炊き上がるカルローズ米は、炒飯・ピラフ・リゾットのように味を付けて食べる料理に向きます。おにぎりや白ご飯は粘りのある国産米のほうが扱いやすいはずです。

だから輸入米を買う人や使う店を責める気にはなれませんでした。国産が値上がりした年に同じ予算で量を確保しようとした側の事情も数字から見えたからです。

米をめぐる数字はどこで追えるか

農林水産省の「米をめぐる状況について」(農産局・令和8年3月)に、需給と価格と輸入の推移がまとまっています。相対取引価格は月ごとに公表されます。

数字は季節で動き立場によって見え方が変わります。SNSで見かけた数字は出どころを一度たどってみるのがよいと思います。

書き始める前の私は輸入米を使う企業への怒りに寄り添う記事になると思っていました。確かめてみると輸入は国産の収穫量の1.3%ほどで、米農家の苦境は輸入よりも値段と規模と年齢の話に近いと感じました。

それでも担い手が5年で25%減った事実は変わりません。田んぼが残るかどうかは毎日の食卓で何を買うかの積み重ねでも決まります。

参考・出典
※ 本記事は2026年10月時点で公表されている資料にもとづいています。JAcomの時給は農水省の統計をもとにした試算で、公式の公表値ではありません。
MISONO FARMERS CLUB

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