畑の脇の木箱に置かれたノートと軍手。苗が育つ畝のそばで栽培記録をつける

働きながら農業を学ぶには|神戸ネクストファーマー制度と体験農園の違い

2026年10月27日(火)

働きながら農業を学ぶには|神戸ネクストファーマー制度と体験農園の違い

農業コラム|働きながら農業

農業を学ぶなら仕事を辞めるしかないと考える人は多いはずです。神戸市には100時間程度の研修で小さく始める道があります

10月26日15時50分からのTOKYO FM「あぐりずむ」で神戸市の担当者がネクストファーマー制度を紹介していて調べました。働きながら農業を学びたい人にとって体験農園と本格的な就農研修のあいだにある制度だと思います。

扱うのは目的の分け方と神戸市の制度の中身と週末に続けられる規模の考え方です。
働きながら農業を学ぶ人の畑の脇。木箱の上のノートと軍手と育ち始めた苗

働きながら農業を始める前に目的を分けて考える

働きながら農業を始めたい人は自家消費と休日の楽しみと販売を伴う営農のどれを目指すかで必要な時間と責任が変わります。

自家消費と販売では責任の重さが違う

自家消費なら収穫が少なくても困る人はいません。休日の楽しみなら畑に行けない週があっても誰にも迷惑をかけません。販売を伴う営農になると事情が変わります。出荷の約束があれば天気が悪くても収穫の日は動かせませんし帳簿や農地の契約も自分の責任になります。

農園の担当者として相談を受けていると三つのどこを目指すのか本人が決めていないまま話が始まることが多いと感じます。目的が決まらないまま始めると必要以上に広い畑を借りてしまったり学びが浅いまま終わってしまったりします。

目的を決めるには一年後の自分が何を手にしていたいかを書き出してみてください。収穫した野菜を家族で食べたいのか。週末に体を動かす時間がほしいのか。いずれ野菜を売りたいのか。答えによって学ぶ場所も使う時間も変わります。

体験農園と市民農園と就農研修は何が違う?

三つの違いは指導の有無と管理する範囲で見分けるのが早道です。農林水産省は市民農園を都市住民などがレクリエーションとして自家用の野菜や花を育てるために小面積の農地を利用する農園と説明しています。開設の形は法律ごとに分かれ農地を使って農作業を行う農園利用方式もそのひとつです。

学び方の目安(運営者によって違います)
市民農園(区画を借りる)栽培の計画も作業も基本は自分。指導の有無は運営者による
体験農園(農園側が教える)作付けの計画は農園側。作業をしながら教わる形が多い
就農研修(認定機関など)栽培管理から出荷・経営・地域との関わりまで体系的に学ぶ
※ 運営者ごとに内容が違うため申し込み前に指導と管理の範囲を確認してください。表は農林水産省の定義をもとにした私の整理です。

自家消費や休日の楽しみが目的なら市民農園か体験農園で足りるでしょう。販売を伴う営農まで見据えるなら就農研修のような体系的な学びが必要です。ところがこの二つのあいだにある仕事を続けながら学べる中間の選択肢は探しても見つけにくいというのが実感です。その空白に制度を置いた自治体のひとつが神戸市でした。

神戸ネクストファーマー制度の農業研修は何を学べる?

神戸ネクストファーマー制度は神戸市の認定研修機関で100時間程度の農業研修を受けた人が100㎡以上1,000㎡未満の小規模な農地で農業を始める道を開く制度です。

研修は100時間程度で従来の1,200時間から短くなった

神戸新聞は2021年10月の記事で従来の本格的な就農には1年以上かけて計1,200時間の研修が必要だったと伝えています。新制度の登録に必要な研修は計100時間(約12日間)で月2日の週末受講なら約半年で修了できるという説明でした。

同じ記事によると狙いは副業型の農業を増やして農家の高齢化で広がる耕作放棄地を抑えることです。耕作放棄地が生まれる背景は耕作放棄地が生まれる理由で書いています。

神戸市の現在のページを見ると研修時間は機関によって100〜130時間程度と幅があります。認定研修機関は14件あり有機栽培や自然栽培や学校給食用野菜の栽培など内容もさまざまです。半年間で毎月18時間を重ねる研修も載っていました。

研修機関を選ぶときは研修時間と内容と日程と修了後のフォローを見比べます。有機栽培と果樹と稲作では学ぶ作物も作業の季節も違います。平日開催か休日開催かも働きながら通えるかを左右します。修了後の農地探しの支援は認定要領でも条件に挙がっているので申し込む前に具体的な支援の内容を聞いておけます。

半農半Xは農業をしながら別の仕事や活動にも力を注ぐ暮らし方で市のページには半農半Xを目指す人向けの研修も並んでいます。仕事を辞めずに農業を学ぶ人のための枠が制度の中に用意されているわけです。

研修に何を入れるかは市の認定要領で決められています。栽培管理は肥料と土づくりから収穫までを通して学びます。収穫後の出荷調整と農業機械の操作と安全対策と栽培後の片づけと次作の準備も入ります。販売と帳簿と労務といった農業経営と農道や水路やため池の共同利用や鳥獣対策を含む地域との関わりも要件です。栽培の技術だけでなく地域に入って農業を続ける準備までが研修に含まれています。

100時間は長いのか短いのか。1日8時間で割ると12日強で週末だけの受講でも半年ほどで届く量です。1,200時間と比べれば仕事を続けながら学べる水準まで下げた設計といえます。ただ六つの内容を100時間に収めるので一つひとつは入口の学びになります。修了してから畑で覚えることのほうが多いと見ておくのが現実的です。

市の資料には借りた農地を良好に管理するよう定期的な草刈りを呼びかける一文もあります。草が伸びると周りの畑にも影響するので小さな畑でも地域の農地を預かる立場になります。

登録から農地を借りるまでは手続きが別々

研修を終えただけで農地を借りられるわけではありません。市の資料は研修と安全講習のあとに登録申請があり農地探しと地域ルールの確認と権利設定の手続きが続くと示しています。

STEP 1
研修と安全講習
認定研修機関の研修を受けます。市または市が指定する事業者の安全講習(1日程度)も受けます。
STEP 2
資格者の登録申請
神戸農政公社に資格者登録申請書と研修修了証などを出します。農地探しは研修機関がフォローします。
STEP 3
地域ルールの確認
就農する地域の農会長などに営農計画を説明し地域のルールを確かめます。
STEP 4
農地の権利設定
農業振興センターに資格登録通知書や農地中間管理事業申出書などを出し手続きが終われば農業開始です。

農作業は刃物や機械を扱う場面が多く事故の危険もあります。登録の条件に安全講習が入っているのは自然な設計だと感じました。

農地探しは研修機関のフォローがありますが探す先は地域の農地です。認定要領は研修機関に希望する修了者への農地のあっせんや営農する地域との調整を続けて支援できる体制を求めています。修了後に頼れる窓口があるかどうかを研修機関を選ぶ基準にしている制度だと読みました。

この制度の外側にあるもの

認定研修機関は神戸市内で研修を実施する機関と定められ借りる農地も市内の農地が前提です。神戸の制度を埼玉県内でそのまま使えるわけではありません。お住まいの市区町村に似た窓口があるかどうかは自治体の農政担当や農業委員会で確かめる必要があります。

農地を借りたり買ったりするときの法律の基本は農地取得の法律と規制に書きました。

MFCは神戸市の認定研修機関ではありません。ここまでは制度の紹介で農園のサービスの案内とは別の話です。

週末農業を続けられるかは作業時間と通う距離で決まる

週末農業が続くかどうかは作物ごとの手入れの頻度と畑までの移動時間で決まります。

休日だけで畑は回る?

休日だけで回るかどうかは作物で変わり実がなる夏野菜は週1回では収穫が追いつきません。草取りの重さも季節で変わります。夏は草の伸びが速く1〜2週間空けると畝が草に覆われることもあるほどです。

作物別の手入れの目安(私の経験にもとづく目安)
トマト・キュウリ・ナス収穫期は実が次々とつく。週1回では取り遅れが出やすい
小松菜・ルッコラなどの葉物発芽から間引きまでは水やりが要る。育ってからは収穫の日を選びやすい
大根・にんじんなどの根菜間引きと草取りの時期を逃さなければ週1回でも回しやすい
※ 地域・季節・畑の条件で変わります。
木箱に入った収穫したてのにんじんとケールと赤い根菜。作物ごとに手入れの頻度が違う

家庭菜園の経験がある人は自宅の栽培で水やりと草取りにかかる時間を一度測っておくと畑の見積もりに使えます。初めての人には収穫の頻度が低い根菜や葉物から入るほうが続けやすいと考えています。夏野菜は育てる楽しみが大きい反面で仕事の繁忙期と重なると畑が負担になりやすい作物です。

費用と道具と移動と繁忙期をどう見積もる?

費用と道具と移動と繁忙期は畑を借りる前に一度書き出して見積もるのが確実です。

CHECK LIST 畑を続けられるかを見積もる項目
1畑までの往復の移動時間と交通費(作業時間とは別に毎回かかる)
2週に何回・1回何時間まで畑に使えるか
3夏の草と収穫と秋の植え付けの時期が仕事の繁忙期と重ならないか
4道具と種苗と資材の費用(最初に揃えるもの)
5水を確保できる場所か
6台風や猛暑で見に行けない週をどうするか

移動時間は作業時間に含めて考えてください。たとえば往復1時間かけて通い畑で2時間作業するなら1回で3時間が休日から消えます。週に1回通うと月に12時間ほどです。この時間が毎週確保できるかどうかを手帳で確かめておくと続けられるかの見通しが立ちます。

畑の忙しさは一年を通して同じではありません。関東の畑では春と秋に種まきと植え付けが重なり夏は草と収穫に追われます。冬は作業が減るので通う頻度を落とせる作物を選ぶ手もあります。

水の確保も見落とされがちです。水道が近くにない畑ではじょうろで運ぶことになり夏の水やりがいちばんの重労働になります。

ベンチに並べたスコップと軍手とじょうろ。畑通いに最初にそろえる道具

道具と種苗の費用は一度で終わらずシーズンごとに必要になります。最初に揃える道具や土づくりの手順は家庭菜園の始め方にまとめています。

広さは作業時間から逆算する

神戸市の制度が想定する100㎡は約30坪で一人で週末に管理する広さとしては小さくありません。初めての人は数㎡の畝から始めて手入れにかかる時間を測ってから広げるほうが失敗が少ないと考えています。

畑が広くなるほど草と収穫の手間も同じ割合で増えます。広さを決めるのはやりたい気持ちの大きさより毎週確保できる時間のほうです。

畑に行けない週の備えも広さと一緒に決めておきます。台風や猛暑の週は無理に通わないと割り切れる規模にしておけば畑のために仕事の予定を動かす事態は避けられます。

浦和美園でまず一作を植え付けから経験してみる

美園ファーマーズ倶楽部(MFC)の大人の農業体験は月2回・3か月・全6回(各2時間)で土づくりから収穫までの流れを体験するプログラムです。

MFCの大人の農業体験でできること

実施風景ではスタッフの説明を受けながら土づくりと畝づくりとマルチ張りと植え付けと水やりと生育観察と収穫に取り組みました。会場は埼玉県さいたま市緑区大崎の無農薬の畑で料金は12,000円(税込)です。対象は高校生(16歳)以上で現地でスタッフのレクチャーを受けられます。

植え付けたばかりの苗の根元を土で押さえる素手の手元

各回は2時間で午前の回と午後の回が隔回で入れ替わります。参加者からは「栽培管理の大切さが分かった」という声が届いています。作業の内容は天候や作物の生育で変わるため毎回同じ体験にはなりません。

全6回で合計12時間です。神戸市の研修とは桁が違うので就農研修の代わりにはなりません。MFCは認定研修機関ではなく収入や就農の成功を約束するものでもありません。

それでも一作を植え付けから見ると水やりと草取りと収穫の忙しさが月ごとにどう変わるかが分かります。働きながら続けられるかを考える材料としてはこれがいちばん役に立つと思っています。プランの内容はちょこっと農業体験のページで確認できます。

体験の日はノートを持って行き作業の内容と自分の疲れ具合を毎回書き留めておくと続けられるかを判断する材料になります。畑の作業は思ったより体力を使うので翌日の体の様子も記録の対象です。

栽培を最初から最後まで学ぶための質問例

体験を選ぶときは収穫の楽しさより管理の扱いを聞いてみてください。

CHECK LIST 体験農園や農業体験で聞いておきたいこと
1植え付け前の土づくりや畝づくりにも参加できるか
2作付けの計画は誰が立て参加者はどこまで関われるか
3草取りや水やりなどの日々の管理は誰が担うか
4通えない週の管理はどうなるか
5雨の日や猛暑日の振替はあるか
6収穫した野菜の持ち帰りのルールはどうなっているか
軍手をして畝の草を抜く後ろ姿。休日に畑へ通う草管理の作業

自分の区画で通年の管理まで経験したい場合はMFCのファミリープランという選択肢もあります。3月から翌年2月までの区画制で料金は1区画38,000円(税込)です。スタッフのサポート回は毎月1回でそのほかの日は自由に畑へ通えます。

3か月の体験のあとはオプションで通う月を3か月ごとに選べます。続けるかどうかは体験の中で自分の週末の時間と照らして決められます。

3か月が終わったら次の三つで見極めてみてください。決めた日に通えた回数と作業と移動を合わせた実際の時間と畑に立った翌日の体と気持ちです。三つとも余裕があれば区画を持つ段階に進めますし余裕がなければ回数を減らして続ける道もあります。

農業を学ぶなら辞めるか趣味で終わるかのどちらかに見えていた人にも100時間程度の研修で小さく始める道はありました。ただその道が自分の暮らしに合うかどうかは別の話です。一作を植え付けから経験して自分の週末に何時間あるかを測ってみてください。

参考・出典
※ 本記事は2026年10月時点で公表されている資料にもとづいています。番組の放送内容は含みません。制度の最新の要件は神戸市と神戸農政公社に確認してください。
MISONO FARMERS CLUB

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