地面に落ちた栗のイガと、割れたイガの中から顔を出す栗

栗拾いは「拾って終わり」じゃない|選別から学ぶ収穫体験の楽しみ方

2026年10月23日(金)

栗拾いは「拾って終わり」じゃない|選別から学ぶ収穫体験の楽しみ方

農業コラム|栗拾い

栗拾いは拾った栗を持ち帰れば終わりだと思っていました。10月25日放送の番組予告には出荷前の厳しい選別とあります

テレビ東京「種から植えるTV」は10月25日の放送で茨城県笠間市の栗5キロの収穫を取り上げます。予告では傷や虫食いを見抜く選別と機械によるサイズ分けまでを体験する回です。栗拾いは拾う手間よりも拾ったあとの扱いに学べることが多い体験だと思います。

栗拾いの時期や拾い方は農林水産省の広報誌『aff』2019年10月号(笠間市農業公社への取材)を、番組の内容はテレビ東京の公式予告をもとにしています。放送前なので番組で実際に何が紹介されるかは書いていません。
地面に落ちた栗のイガと割れたイガの中から顔を出す栗。栗拾いで拾うのはこの栗

栗拾いは何をする?時期と服装と道具と事前の確認

栗拾いは木からもぎ取るのではなく地面に落ちた栗をイガから取り出して拾う収穫体験です。

栗拾いの時期と拾い方の流れ

笠間市農業公社に取材した農林水産省の広報誌『aff』2019年10月号では、栗拾いの時期をだいたい9月から10月中旬としています。桃やりんごの果物狩りは木になっている実をもぎ取りますが栗は事情が違います。

他の果物狩りと違って木からはもぎ取りません。拾うのは地面に落ちた栗だけです。イガは足で踏んで開き中の栗だけを拾い出します。厚手の手袋があればイガのまま手で拾うこともできると同誌は書いています。

放送日の10月25日は同誌が示すだいたい10月中旬の目安を過ぎています。番組を見て行きたくなっても今年の栗拾いは終わっている農園があるかもしれないので、来年に向けた下見として収穫期を聞いておくのがよさそうです。

STEP 1
落ちた栗を探す
木から落ちたイガや栗を地面から探します。
STEP 2
イガを足で踏んで開く
イガを足で踏んで開き中の栗を出します。
STEP 3
火バサミか手袋で拾う
火バサミか厚手の手袋でイガの中の栗を拾います。

1つのイガには一般的な品種で栗が3個入っています。開いたイガを覗くと粒の大きさや色つやに差があることはすぐ分かるので選別は拾う手の中から始まっていると感じます。

10月25日放送の番組予告は栗5キロの収穫を取り上げ、イガから栗を取り出す地道な作業で腰が悲鳴を上げるかもしれないと伝えています。5キロは番組の企画で、初めての栗拾いなら拾う時間より持ち帰ったあとの手間を先に考えたほうがよいと私は感じました。

笠間市のある茨城県は栗の収穫量が全国1位です(農林水産省『茨城県の農林水産業の概要』2026年版)。2019年の同誌は笠間市が県内で栽培面積1位でありブランド化に取り組んでいると紹介していました。

火バサミでイガの中から栗を取り出す手元

栗拾いの服装と道具

栗拾いは長袖と長ズボンと帽子で出かけます。栗の収穫期は虫の多い時期で木からイガが落ちてくることもあるためです。

イガを開く道具は厚手の手袋と火バサミです。同誌の写真には足で開いたイガから火バサミで栗を拾う様子が載っています。イガを踏むので靴底がしっかりした靴が合うと私は考えています。素手でイガに触るのは避けたいところです。

栗拾いの前に農園へ聞いておくこと

栗拾いの時期は年によって前後することがあり行く日の収穫状況は農園に聞くのがいちばん確実です。持ち帰りのルールも農園ごとに違います。

CHECK LIST 栗拾いの前に農園へ聞いておくこと
1今週は拾える状態か(収穫期の見込みと予約の要否)
2拾ってよいのは落ちた栗だけか(イガの扱いも含めて)
3持ち帰れる量の上限と料金の決め方
4手袋や火バサミは借りられるか
5虫食いや傷のある栗は持ち帰ってよいか(選別の扱い)

5つ目の答えは農園の選別の考え方がそのまま出る部分です。

栗の選別とは?傷と虫食いを見抜く仕事とサイズ分け

笠間の栗は出荷の前に傷や虫食いを見抜く選別と機械によるサイズ分けを通ると、テレビ東京の公式予告は伝えています。

予告の文面は選別とサイズ分けを別の作業として並べています。拾い終えてもそれは出荷への入口にすぎないと私は読みました。

選別は食べる人の手元へ傷んだ栗を渡さないための仕事でしょう。栗は傷みやすい果物なので、傷や虫食いのある栗が混ざると周りの栗にも響くのではないかと農家の目には映ります。サイズ分けは売り方や使い方をそろえる作業だと私は見ています。

選別台の上で栗の大きさと座の状態を確かめる手元

栗の選別で見るのは傷と虫食い

選別の基準そのものは放送前なので分かりません。参考になるのは笠間市農業公社が農林水産省の広報誌で紹介したおいしい栗の見分け方です。

おいしい栗の見分け方(笠間市農業公社)
鬼皮(外側の硬い皮)張りがあり茶色が濃い
指で押したときブカブカしていない
表面白いブツブツがついていない
座(底の部分)黒っぽい箇所がなくベトベトしていない
虫食い・病気の栗表面が白っぽくなり座が黒くなる
※ 農林水産省『aff』2019年10月号。出荷選別の基準そのものではなく栗の見分け方として紹介されたものです。

座は栗の底にある色の薄い面です。拾った栗を裏返して座を見ると状態をつかみやすくなります。

5つの目安は拾ったその場でも使えるものです。鬼皮の張りと色は見れば分かり指で押せばブカブカかどうかも分かります。座だけは裏返さないと見えないので、拾い歩きの途中でも数粒ずつ裏返す癖をつけると持ち帰る栗の質が揃います。

大きさの違いと品質の問題は別の話

大きさと品質は別の物差しです。大粒でも傷や虫食いがあれば食べる側には問題ですし小粒でも傷がなければ品質に問題はありません。

サイズ分けは機械を使うと予告にあります。粒の大きさをそろえると袋詰めの量が揃い料理でも火の通りが揃うので、使う側に役立つ仕事だと私は見ています。

栗は品種で粒の大きさも向く料理も違います。

主な栗の品種と特徴
筑波(9月下旬〜10月上旬)大きめで皮に光沢がある。ゆで栗や渋皮煮に向く
銀寄=丹波栗(9月下旬〜10月上旬)形が平らで粒は大きめ。料理や菓子に幅広く使われる
丹沢(9月上旬〜中旬)三角形で皮の光沢が少ない。果肉の色が鮮やかで菓子の原料になることが多い
ぽろたん(9月中旬〜下旬)丹沢と似た三角形。皮が簡単にむけて料理しやすい
※ 農林水産省『aff』2019年10月号(写真提供は茨城県)。熟期は同誌の表記です。

収穫の時期は丹沢の9月上旬から筑波の10月上旬まで約1か月の幅があります。同じ栗拾いでも行く日によって当たる品種が変わるので、どの品種かを農園で聞いておくと拾う楽しみが増えるでしょう。

見た目だけで食べられると決めない

見分け方の目安は外から見える特徴にもとづくもので栗の中の状態まで約束するものではありません。虫食いの栗は表面や座に変化が出ると同誌は書いていますが外見に出ない傷みがあるかどうかまでは書かれていません。

農林水産省の広報誌は栗を一般的に生で食べられることがない果物と説明しています。拾った栗をそのまま食べてよいかは農園の説明に従うのが安全です。持ち帰れる栗の条件も農園ごとに違うので、選別の結果どれが持ち帰りの対象になるのかは拾う前に聞いておくとよいでしょう。

農園の人に聞くときは「持ち帰れない栗はどんな栗ですか」と尋ねると選別の考え方が分かります。傷や虫食いのある栗が対象外と言われても、それは食べる人が困らないための線引きだと受け止めたいところです。

栗の保存方法と調理|持ち帰る量の決め方

栗は傷みやすい果物なので農林水産省の広報誌は収穫したその日のうちに食べるよう勧めています。

栗の保存方法は?

保存するならポリ袋に入れて口は縛らず折るだけにして冷蔵庫のチルド室に入れ0度付近に置きます。

STEP 1
ポリ袋に入れる
ポリエチレン製の袋に栗を入れます。
STEP 2
口は縛らず折るだけ
袋の口は縛らず折るだけにします。
STEP 3
チルド室で0度付近
冷蔵庫のチルド室に入れて0度付近で保存します。

それでも保存できるのは1週間程度でできるだけ早く食べるようにと同誌は書いています。

口を縛らず折っただけのポリ袋に入れた栗。栗の保存方法は冷蔵で1週間程度

茨城県の概要資料には産地で低温熟成して甘みを増した貯蔵栗も出荷されていると書かれています。家庭の冷蔵庫と産地の貯蔵は同じ条件ではないので1週間という目安は守ったほうがよさそうです。

持ち帰る量はどう決める?

持ち帰る量は1週間以内に食べ切れる量から逆算して決めます。

栗は保存が1週間程度のうえに皮むきの手間がかかる食材です。同誌の方法だと鬼皮をむく前に熱湯へ10分つけ、渋皮は鬼皮をむいた栗を1〜2分ゆでて冷めるまで待ってからむきます。家に着いてから栗をむく時間も持ち帰り量に入れておくと拾いすぎて持て余す失敗を避けられるでしょう。

私なら食べる分と料理に使う分と誰かに分ける分に先に分けてから量を決めます。拾った日にゆで栗にして残りは数日のうちに料理へ回すくらいの段取りが家庭では現実的だと思います。

ゆで栗に40〜50分かかることも見落としがちです。拾った日の夕方に火にかけるなら帰宅時間から逆算しておくと、夕食の支度と栗の下ごしらえが重なる事態を避けられます。

栗料理は何から作る?

手軽に始めるならゆで栗です。同誌は品種による味の違いが分かりやすい食べ方としています。

栗の下ごしらえ(農林水産省『aff』2019年10月号)
ゆで栗沸騰した湯に生栗を入れて中火で40〜50分ゆでる。縦半分に切ってスプーンですくう
鬼皮のむき方生栗を熱湯に10分つける。座から頭へ包丁で切り込みを入れて手でむく
渋皮のむき方鬼皮をむいた栗を沸騰した湯で1〜2分ゆでる。手で触れる温度まで冷まして手でむく
※ ゆで上がりはやけどに注意して切ること。

ゆで栗は皮をむく手間が省けるうえスプーンで食べられるのが利点です。渋皮にはポリフェノールの一種のタンニンが多く含まれると同誌は紹介しています。栗の栄養価は高くいも類(生)よりも多くのエネルギーが摂れる食材だそうです。

テレビ東京の予告では農家メシとして栗おこわと栗の天ぷらが登場します。おいしく仕上げる農家直伝のコツも紹介されるそうですが放送前なので中身は分かりません。コツは放送で確かめたいところです。

栗拾いの先まで知ると収穫体験はもっと面白くなる

栗拾いも野菜の収穫も育てて収穫して選んで食べるまでを一続きで見ると体験の中身が変わります。

栗の形と大きさと傷を親子で観察する

栗は野菜ではなく木に実る果物で私たちが果肉だと思って食べている部分は植物としては種です。外側の硬い鬼皮が果肉にあたると農林水産省の広報誌は説明しています。

イガの中の栗は一般的な品種では3個ですが、栽培技術で1つのイガに1粒だけ入った大粒を作る産地もあります。茨城県のブランド栗『飯沼栗』が例に挙がっていました。

大きさも形もばらばらの栗と虫眼鏡。栗拾いのあとに親子で観察できる

手に取ったら親子で見る場所を決めておけば会話は自然に生まれるものです。

CHECK LIST 栗を手に取ったら見るところ
1イガの中の栗は何個あったか
2鬼皮に張りがあるか・茶色は濃いか
3座を裏返すと黒い所やベトつきはないか
4粒ごとの大きさはどれくらい違うか
5同じイガの栗でも形は同じか

持ち帰った栗を5粒ほど机に出して大きい順に並べてみるのも一つの遊びです。座を裏返して黒い所のない粒だけを残して並び順と見比べてみましょう。大きい栗が傷んでいることも小さい栗が無傷なこともあると分かれば、大きさと品質が別の物差しだと実感できるはずです。栗拾いに行けなかった今年はスーパーで買った栗の座を裏返すだけでも同じ観察ができるでしょう。

栗の話題は観察のほかにも広がります。栗の木は成長が早く樹齢20年で幹の太さが20〜30センチになり、樹齢100年では1メートルを超える巨木になると同誌は紹介しています。材質が固くて腐りにくいため明治時代には線路の枕木にもよく使われました。

ケーキのモンブランは栗にちなんだ名前だと思われがちですが同誌によれば栗とは関係がありません。フランス語で山と白を意味する言葉が並んだ名前でアルプスの最高峰の山にちなむといわれています。丹波栗は古事記や万葉集にも登場する歴史のある栗で、全国に広まったのは江戸時代の参勤交代を通じてだとされています。番組の予告には戦国時代にまつわる栗クイズも載っていますが中身は放送を待つしかありません。

野菜の収穫体験でも同じ見方ができる

畑で野菜を収穫する体験でも収穫のあとに形と大きさと傷を見る時間を取ると学びが増えます。

MFCのさつまいも収穫体験では芋を引っ張らずにいちばん下まで掘ってから抜くよう伝えています。折れた芋は貯蔵できないので掘り方がその後の保存にまで響きます。さつまいもの育て方と品種の違いには品種ごとの掘り時と貯蔵のしやすさをまとめています。

栗なら傷の有無と大きさで行き先が分かれ芋なら折れたかどうかと品種の貯蔵性で行き先が分かれます。掘る・選ぶ・食べるが切れずにつながっているところは同じです。

収穫のあとの扱いは作物によって逆になることもあります。栗はその日のうちに食べるのがすすめられるのに対し、さつまいもは掘って2週間ほど風通しのよい場所に置くと甘みが増します。MFCの焼き芋体験でも事前に掘って置いておいた芋を焼いています。同じ収穫でも作物ごとに待つ時間が違うことは、栗拾いの帰りの冷蔵庫の前でも思い出してもらえるとうれしいです。

栗拾いは各地の栗園が行う体験でここまでの栗の話はMFCの活動ではありません。野菜の収穫に置き換えられる見方だけを借りました。

放送で答え合わせしたいこと

放送を見る前に私が気になっているのは選別の基準です。予告は傷や虫食いを見抜くと書くだけで何を傷と呼び虫食いをどう見分けるかまでは分かりません。農林水産省の広報誌にある見分け方と照らして答え合わせをしながら見るつもりです。

拾えば終わりだと思っていた栗拾いは予告を読んで選別まで含めて一つの仕事に見えてきました。

参考・出典
※ 本記事は2026年10月時点で公表されている資料にもとづいています。番組の内容は放送前の公式予告によるもので、放送後の内容は含みません。
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