ベランダのプランターで実をつけたミニトマト。家庭菜園は一株からでも始められる

2050年に食料危機は起こる?|日本の農業の未来と今からできること

2026年9月28日(月)

2050年に食料危機は起こる?|日本の農業の未来と今からできること

農業コラム|食料と農業

2050年の世界人口は約97億人。それでも「食料危機が必ず来る」と書いた公的資料は見当たりません。

お米の値段が上がり野菜も年によって急に跳ねる。そこへ「2050年 食料危機」という言葉が重なると、この先も今と同じように食べ物を買えるのか気になってきます。畑で野菜を育てている立場から統計を読み直してみると心配の置きどころは報道の印象と少しずれていました。

扱うのは世界と日本でそれぞれ何が変わっているのかと日本の食料自給率と農業の担い手そして家庭菜園で身につけられる「育てる力」です。
ベランダのプランターで実をつけたミニトマト。家庭菜園は一株からでも始められる

2050年にスーパーの棚から食べ物が消えると決まっているわけではありません。国連やFAO(国連食糧農業機関)の資料を読んでもそうした予言は出てきませんでした。

それでも気にかける理由はあります。人口の増加と気候変動は統計で確かめられる変化です。肥料や飼料の海外依存と日本で農業を担う人の減少も同じです。心配すべきは食べ物がなくなるかどうかより条件が重なったときにも安定して手に入り続けるかどうかのほうでした。

起こるか起こらないかの二択で考えるとどちらを選んでも行動につながりません。何がリスクで日本では何が問題なのか。個人の手元に何を用意できるのか。畑にいる人間として気になったのはこの3つでした。

2050年の食料危機は「決まった未来」ではない

FAOは2050年の農業には2012年と比べて約50%多い食料・飼料・バイオ燃料の生産が必要になると見積もっています(FAO「Green Growth」)。

「50%増やす必要がある」は「50%足りなくなる」ではない

この数字を初めて見たとき私も半分足りなくなるのかと読みかけました。実際は人口が増えて所得が上がり肉や油を多く食べるようになる世界で、需要に見合う生産量を示した目安です。今ある食料の半分が消えるという意味ではありません。

生産の側も止まってはいません。農林水産省の令和7年度食料・農業・農村白書は農林水産政策研究所が2026年3月に公表した2035年の見通しを紹介しています。穀物の需要の伸びは緩やかになり収穫面積もわずかに減るものの、栽培技術の進歩で単収が上がり生産量は増える見通しです。需要が増えるのと同時に作る力も伸びていく前提で見通しは組まれています。

問題は「世界に食料があるか」だけではない

食料安全保障は日本では食料・農業・農村基本法(2024年改正)の第2条で「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義されています。量が足りているだけでは条件を満たさないところに目が留まりました。

世界全体で食料が足りていても価格が跳ね上がれば手が届かない人が出ます。港が止まったり輸送費が上がったりすればあるはずの食料が届きません。この記事で使う「食料危機」も単純な不足ではなく安定供給が揺らぐリスクという意味で考えています。

2050年に向けて食料の条件が厳しくなる3つの理由

世界の食料をめぐる条件は人口の増加と気候変動と国際的な供給網への依存という3つの変化が重なることで、2050年に向けて厳しくなると見込まれています。

図表1|2050年の食料問題を考える4つの変化
世界人口2024年 約82億人 → 2050年 約97億人(国連・2024年推計)
気候変動高温・干ばつ・洪水などで生産が不安定に(IPCC・2022年)
日本の食料供給カロリーベース食料自給率 37%(農林水産省・令和7年度)
日本の農業基幹的農業従事者 約103.6万人・平均67.7歳(2025年)
※ 図表だけから「食料危機が必ず起きる」とは読めません。どれも条件の変化を示す数字です。

世界人口は2050年に約97億人へ

国連の「世界人口推計2024年版」では、世界人口は2024年の約82億人から2050年には約97億人に増える見通しです。ピークは2080年代半ばの約103億人とされています。増える地域はサハラ以南のアフリカなどに偏っていて世界中が同じ速さで増えるわけではありません。

人口が約18%増えるから食料も18%必要という計算にもなりません。所得が上がって食生活が変わると家畜のえさになる穀物の需要が大きく伸びるからです。人の数だけでなく何を食べるようになるかで必要な量は変わります。

気候変動で収量が揺れやすくなる

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書(2022年)は、気候変動がすでに食料安全保障に悪影響を及ぼしていると評価しています。極端な気象による生産の急減も20世紀半ば以降に増えたとしています。高温や干ばつや洪水に加えて雨の降り方の変化や病害虫の広がりも収量を揺らします。

影響は一律ではありません。寒い地域では栽培できる範囲が北へ広がる作物もあり熱帯では適地が減っています。結果は地域と作物によって違い、気温の上がり幅や品種と作期の工夫がどこまで進むかでも大きく変わるとIPCCも書いています。畑でも夏の暑さで実がつきにくくなったナスやピーマンを見るとこの揺れは実感として分かります。

食料は農地だけで作られていない

国産の野菜なら海外の情勢とは関係ないと私も以前は思っていました。実際には化学肥料の原料も家畜の飼料もトラクターの燃料も多くを海外に頼っています。種苗の一部やそれらを運ぶ船まで含めると日本の農業は生産の段階から海外とつながっています。

農林水産省の令和5年度食育白書によると、2022年2月のロシアによるウクライナ侵略をきっかけに小麦やとうもろこしだけでなく肥料や原油などの生産資材も価格が高騰しました。安定供給を脅かす事態も生じたとされています。畑で使う肥料の値上がりは農家にとっても身近な出来事でした。

日本の食料危機で減っているのは「作る人」

日本の人口は2050年に約1億468万人まで減る見通しで、世界人口の増加だけを理由に日本の食料危機を説明することはできません。

世界
食べる人が増える
  • 世界人口 2024年 約82億人
  • → 2050年 約97億人(国連)
  • 所得の上昇で肉・油・飼料の需要も伸びる
日本
人口は減るが作る人も減っている
  • 日本人口 2020年 約1億2,615万人
  • → 2050年 約1億468万人(社人研)
  • 基幹的農業従事者 2000年 240万人 → 2025年 約103.6万人
図表2|世界と日本で異なる問題。食料問題は単純な人口問題ではありません。

日本の人口は2050年に約1億470万人へ減る

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」の出生中位推計では、2020年に約1億2,615万人だった日本の人口は2050年に約1億468万人となります。食べる人の数だけを見れば国内の需要は減っていく方向です。

それでも日本の食料が気になるのは食べる人より早いペースで別の数字が動いているからでした。

日本の食料自給率はカロリーベースで37%

農林水産省が2026年8月に公表した令和7年度の食料自給率はカロリーベースで37%でした。生産額ベースでは66%で摂取熱量ベースでは45%です。カロリーベースは前年度より1ポイント下がっています。

37%は日本の食べ物の63%が輸入品という意味ではありません。国内で供給された熱量のうち国産でまかなえた割合です。米はほぼ国産で小麦や大豆や油の原料は大半を輸入に頼るというように品目によって数字は大きく違います。自給率が低いから直ちに食料危機になるとは言えませんが、海外からの供給が揺れたときの影響を受けやすい構造を測るひとつの目安にはなります。

輸入が滞ったとき何を主食にするのかという問いは有事の主食が芋である理由を書いたときにも考えました。

日本では「食べる人」以上に「作る人」が減っている

令和7年度の食料・農業・農村白書によると、ふだん仕事として主に農業に従事する基幹的農業従事者は2000年の240万人から2025年には103万6千人まで減りました。25年で半分以下です。平均年齢は67.7歳で65歳以上が69.6%を占めています。

日本の人口が2050年までに約17%減るのに対して農業の担い手は25年で半分以下になりました。世界では食べる人が増え日本では作る人が減る。異なる問題が同時に進んでいるわけです。

担い手が減れば必ず食料が足りなくなるとまでは言えません。農地を集めて規模を広げる経営やデータと機械を使うスマート農業で少ない人数でも生産を保てる余地はあります。農業の人手不足がどこまで補えるかはこれからの20年ほどで分かってくるのだと思います。

家庭菜園の野菜で作ったおかずとごはんの食卓。食料自給率の話は毎日の食卓につながっている

家庭菜園で食料危機に備えられるのか

家庭菜園だけで食料を完全に自給するのは現実的ではなく、家庭菜園の価値は収穫量よりも食べ物を育てる知識と経験が手元に残ることにあります。

家庭菜園での完全な自給は現実的ではない

米や小麦や大豆に食用油と肉や卵まで含めて1日に必要な熱量を家庭菜園でまかなうのは難しいと考えています。ベランダや庭で野菜を育てることと食生活全体を自給することは別の話です。FAOの資料も都市農業が家計や栄養に貢献するとしつつもそれだけで都市の食料を支えるものとしては扱っていません。

MFCでも3m×5mの家庭菜園で夏野菜を育てた例を記事にしました。15㎡でもナスやキュウリやトマトは食卓に並べられます。それでもこれで食料危機が来ても大丈夫とは書けません。野菜は増えても主食と油の分は残るからです。

それでも「育てられる人」と「買うしかない人」には違いがある

家庭菜園を一年続けると種や苗の選び方から土の作り方と植え付けの時期までを自分で決めることになります。水と肥料の加減や病害虫の見分け方も収穫のタイミングや保存の仕方も一通り手で覚えます。失敗したら翌年にどこを変えるかを考えます。

軍手をはめた両手で畑の土をすくい状態を確かめる様子

この経験を重ねるとスーパーの野菜を並んでいる商品としてだけでなく、季節と土と天気と人の手で作られたものとして見るようになります。長雨の年にキュウリが高くなると畑で何が起きたのか想像がつくようになりました。

価格のニュースの受け止め方も変わります。野菜が高いと聞いたとき天候のせいなのか肥料や燃料の値上がりなのか作る人が減ったせいなのかを分けて考えられるようになる。食料危機という大きな言葉を自分の暮らしに引きつけて読むための手がかりが増えるのだと感じています。

FAOは都市と近郊の農業を都市の食料供給のレジリエンス(しなやかな回復力)を高める基本的な戦略のひとつに位置づけています。家庭菜園もふだんは趣味でも状況によっては生活の技術になります。

家庭菜園で「育てる力」を身につける4つの段階

食べ物を育てる力は広い農地もトラクターも持たずにプランター1個と苗1株から身につけ始められます。農業を学ぶと聞くと就農や農地の購入を思い浮かべがちですが、生活者に必要なのは苗や種から収穫までを一度自分でやり通した経験です。

STEP 1
プランターで1種類
葉物野菜・ハーブ・ミニトマトのどれかを苗から。植え付けから水やりと収穫までの流れを一度通す
STEP 2
小さな畑で根菜・果菜
じゃがいも・サツマイモ・ナス・キュウリ。土づくりと追肥と病害虫を覚える
STEP 3
一年を通して複数の作物
春夏秋冬で品目を替えて作付けの順番や連作と保存まで考える
STEP 4
農園で経験者に学ぶ
土の状態や肥料の量と作業のタイミングを畑で直接見て覚える
プランターに葉物野菜の苗を植え付ける手元

最初の一株は何を育てればいい?

最初の一株はプランターで育てられる葉物野菜かハーブかミニトマトの苗がおすすめです。種より苗から始めるほうが失敗が少なく植え付けから収穫までの流れを短い期間で一通り経験できます。道具は深めのプランターと培養土とじょうろがあれば足ります。

苗はホームセンターの園芸売り場に季節ごとに並ぶものから選ぶとその時期に育てやすい品目が自然と絞られます。最初の年はたいてい何かでつまずきます。水をやりすぎて根を傷めたり追肥の時期を逃して実が小さくなったり。私たちの畑でも毎年どこかで見込みが外れます。つまずいた理由をひとつ書き留めておくと翌年の同じ時期に同じ失敗を繰り返さずに済みます。育てる力の半分はこの書き留めた失敗の積み重ねなのだと思います。

一株を収穫まで育てられたら次はじゃがいも・サツマイモ・ナス・キュウリを小さな区画で育ててみてください。土を耕すことも追肥も葉についた虫を見つけることもここで覚えます。じゃがいもやサツマイモは葉物と違って炭水化物を多く含む作物で掘り上げたときにこれが主食の側の作物かと手で分かります。主食を自給できる量ではありませんが経験としての重さは違いました。

掘り上げたばかりのじゃがいも。家庭菜園で炭水化物の多い作物を育てる経験になる

慣れてきたら一年を通して作物を替えていきます。春はじゃがいも・夏はナス・秋は葉物と並べていくと、同じ場所に同じ科の野菜を続けて植えない連作の考え方や収穫物をどう保存するかまで考えることになります。単発の家庭菜園が農業の仕組みを理解する経験へ広がっていくのはこの段階です。場所選びや道具や土づくりから知りたい方は家庭菜園をゼロから始める方法にまとめています。

独学で分かりにくいところは誰に教わる?

土の状態・肥料の量・病害虫の見分け方は本や動画より畑で経験者に教わるほうが早く身につきます。同じ湿った土でも手に取って崩れ方を見れば植え付けてよいかどうかが分かる。こうした感覚は文字にしにくいところです。

美園ファーマーズ倶楽部(MFC)の大人の農業体験では月2回・3か月の全6回で土づくりから植え付けと手入れと収穫までをスタッフと一緒に進めます。単発の収穫体験では見えない途中の作業に関われるので土づくりから収穫まで実際に学んでみる場として使ってもらえたらと思っています。

今年の一株から2050年に備える

2050年に本当に食料危機が起こるかは今の時点では断定できません。品種改良やスマート農業で生産性が上がればリスクは小さくなるかもしれません。すべての食料を自分で作る必要もありませんし家庭菜園で食料問題が解決するわけでもありません。

それでも食べ物を買うことしかできない状態と、少しなら自分で育てる方法を知っている状態には差があります。2050年まではあと約24年。ミニトマト1株でもじゃがいもやサツマイモを数株でもプランターの葉物でもかまいません。食料を備蓄しておくのと同じように食べ物がどう育つのかを自分の手で知っておくことも、将来へのひとつの備えになると考えています。

参考・出典
※ 本記事は2026年9月時点で公表されている資料にもとづいています。将来の数値は各機関の推計・見通しであり、確定したものではありません。
MISONO FARMERS CLUB

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