雨上がりの畝のそばで水に濡れたキャベツの苗。溝には雨水がたまっている

根こぶ病と長雨|キャベツ約3,000株廃棄から学ぶ雨あとの畑の見方

2026年11月5日(木)

根こぶ病と長雨|キャベツ約3,000株廃棄から学ぶ雨あとの畑の見方

農業コラム|長雨と根こぶ病

千葉県松戸市の農園が、根こぶ病に感染したキャベツ約3,000株を廃棄しました。

農園主は20年キャベツを作ってきた人です。その人でも最初は根こぶ病と気づかず肥料を与えたと話しています。長雨のあとの畑で家庭菜園の側にできるのは病名を当てることより見たことを残すことだと考えました。

扱うのは報道で確かめられた範囲と雨のあとの記録と排水の考え方と相談に持ち込むものです。
雨上がりの畝のそばで水に濡れたキャベツの苗。溝には雨水がたまっている

11月2日にテレビ朝日系の「グッド!モーニング」が千葉県松戸市の「カネキ近藤農園」で根こぶ病が広がったと伝えました。名物の矢切ねぎを育てる農園で秋の収穫前のキャベツが感染したそうです。廃棄は約3,000株に上りました。

数より引っかかったのは農園主の近藤泰久さんの話です。キャベツ作りは20年で少しずつ出ることは以前からあったといいます。それでも今回は最初に根こぶ病と気づかず肥料を与えました。

畑に20年立つ人が最初は見誤る病気を家庭菜園の側が見た目で言い当てるのは無理があります。できるのは雨のあとに見たことを日付つきで残して相談できる形にしておくことです。

松戸の農園で根こぶ病は何が起きたのか

千葉県松戸市のカネキ近藤農園は根こぶ病に感染したキャベツ約3,000株を2026年の秋に廃棄しました(テレビ朝日系・11月2日放送)。感染は収穫前に見つかり被害が広がったと報じられています。

報道で確かめられる範囲

番組は根こぶ病を土の中の病原菌が根に感染して地上部が枯れる伝染病と説明しました。感染した根はこぶ状に膨らんで水分や養分をうまく吸えなくなります。水はけが悪く土壌の水分が多い環境で発生しやすいとも伝えています。

図表1|報道で確かめられた内容(テレビ朝日系・2026年11月2日)
農園カネキ近藤農園(千葉県松戸市)
被害キャベツ約3,000株を廃棄
病名根こぶ病(土中の病原菌が根に感染)
背景今年の長雨の影響で拡大したと報道
農園主の話キャベツ作り20年で少しずつの発生は以前もあったが今回の被害は非常に大きい

廃棄の判断の是非は報道からは分かりません。ここで書けるのは農園主が最初は根こぶ病と気づかなかったことまでです。気づく前に感染が進んでしまう場面があることをこの一件は示しています。配信記事は農園主が最初に肥料を与えた経緯まで伝えていて、初期の症状を見分ける難しさが現場の言葉で語られていました。農園主は被害が全国に広がれば供給が減って価格がさらに上がる恐れがあると懸念しています。ただ今回の報道は一農園の例で全国の作柄を示すものではありません。

なぜ水の多い畑で出やすいのか

島根県農業技術センターの資料によると、根こぶ病の病原菌は休眠胞子の姿で被害を受けた根や土の中に数年間とどまります。休眠胞子が発芽すると遊走子という泳ぐ胞子が出て水の中を泳ぎ新しい根や根毛に侵入します。

資料は根こぶ病を水分を好む病気と説明しています。長雨で土が水を抱えた状態が続けば病原菌の動ける時間も長くなる。私はそう読みました。資料にそこまで書いてあるわけではないので読み物としての推測です。

一つの農園の事例からどこまで言えるのか

報道から言えるのは長雨の年に水はけの悪い畑で根こぶ病が広がりうることまでです。ほかの農園でどれほど起きているのかはこの報道からは分かりません。病原菌の出どころも前作も畑の排水の具合も報じられていません。

長雨だけが原因とも書けません。同じ資料は低湿地や排水不良の畑で多いと説明し酸性の土壌や高い地温も発生を助けるとしています。農作業で運ばれた土や雨水を通じて周りの畑へ広がることもあります。

雨は要因の一つで畑の水はけや土の酸性度やこれまでの作付けも関わると読むのが無理のない読み方です。

畝と畝のあいだの溝を雨水が流れていく様子。畑の周りに掘った浅い排水の溝

雨のあとに記録したい畑の変化|根こぶ病を疑う前に

長雨のあとの畑では水が残る場所と水が引くまでの時間と葉の状態の3つを同じ場所で日付つきの写真に残します。

診断の材料になるのは写真に写った変化と日付です。気づいたときの記憶は数日で薄れます。長雨の予報が出たら降り始める前に畝の全体を1枚撮っておくと雨で何が変わったのかが後から比べられます。

雨のあとの畑では何を見ればいいのか

見る場所は水の残る場所と畝ごとの高さと葉と株元の4か所です。1つの株を見つめるより畑の中の差を見るほうが手がかりが増えます。葉は昼と朝夕で見え方が変わるので同じ株を朝と昼に1枚ずつ撮ると昼にしおれて朝夕に戻るかどうかが写真で比べられます。写真は株元に近づいた1枚と畝全体を引いた1枚の2枚組にします。雨の翌日だけでなく3日後と1週間後にも同じ場所を撮ると水の引き方の違いが比べられます。株元だけでは畝の中の位置が分からず全体だけでは葉の色が見えないからです。

キャベツの株元の湿った土に移植ごてを差し、土の湿り具合を確かめる手元
CHECK LIST 雨のあとに残す6項目
1水が残った場所(畝間・通路・畑の端)と写真の撮影時刻
2水が引くまでにかかった時間(雨が止んだ時刻から数える)
3畝ごとの違い(高さ・土の色・踏んだときの沈み方)
4葉の状態(黄変・昼のしおれ・朝夕に戻るか)
5株元の様子(土の湿り具合・株のぐらつき)
6作物名と植えた日と、前に植えていた作物

写真には撮影時刻が残ります。雨が止んだ時刻とあわせれば水が引くまでの時間は後から数えられます。雨量は近くの観測所の値を気象庁のサイトで調べられるので手帳には日付だけ書けば足りるでしょう。

書き方の例です。「11月5日・雨が止んだのは15時・17時の時点で畝間に水が残る・Bの畝は16時に引いていた」。日付と時刻は架空ですがこの短さなら続きます。長い日記は3週間で止まりがちです。

畝ごとの違いを比べると何が分かるのか

同じ雨のあとで畝によって水の引き方が違えば土の水はけの差が見えてきます。同じ日に植えた同じ作物の畝どうしなら比べる意味が出ます。

水の残る畝の葉が先に黄色くなっていれば水はけと関わりがありそうだと疑えます。ただ差が見えただけでは原因は分かりません。比べるのは原因を決めるためではありません。相談するときに「この畝だけ水が引くのが遅い」と言えるようにするためです。

POINT
比べるときの3つの決まり
同じ作物であること。同じ頃に植えたこと。同じ位置から同じ向きで撮ること。この3つがそろうと写真が比較の材料になります。
スマートフォンでキャベツの株元の土の様子を撮影する手元。雨のあとの記録

見た目だけで根こぶ病と決めてよいのか

決められません。島根県農業技術センターの資料によると根こぶ病の特徴は地際近くの根にできる大小のこぶです。晴れた日に茎葉がしおれて朝夕に戻ることがあり定植後1か月ごろから症状が出ます。

同じ資料はネコブセンチュウによるこぶは小さく根全体にできるとして根こぶ病と区別しています。根を見ても迷う場面はありそうです。地上部の黄変やしおれは水が多すぎて根が傷む場合にも起こります。根腐れの見分け方は長雨の根腐れ対策に書きました。

! 気になる株を見つけたとき
抜く前に株元と全体の写真を撮ります。抜いた株と土はほかの畝へ持ち込まないでください。土の移動で広がることがあるためです。株の処分は管理者か窓口へ先に尋ねます。

病名を決めるのは根を見られる人の仕事です。畑にいる側の仕事は決めるための材料を欠かさず残しておくことだと考えています。

排水対策は「掘ればよい」では済まない

埼玉県農業技術研究センターの「主穀作農家が水田で初めて野菜を導入するためのてびき」(令和元年度作成)は排水対策を必須としています。野菜の根は水稲のように空気を取り込む組織を持たず湿害を受けやすいというのが理由です。

県の資料は排水対策に何を挙げているのか

同じ資料は排水の悪いほ場での作付けを避けることを前提として対策に周縁の明きょとうね立てと地下排水を挙げています。地下水位は50cm以深で多くの野菜の適応性が高まるとされます。キャベツは資料の表で30cm以深とする試験と50cm以深とする試験の両方が載っています。

明きょはほ場の周りを額縁状に掘る溝です。資料は排水対策上最も重要で野菜栽培では必須と書いています。うね立ては湿害が心配なほ場でキャベツなら10〜20cm程度とされています。

図表2|県の資料の排水対策と、家庭菜園での考え方
周縁の明きょほ場の周りを額縁状に掘る(県資料は最も重要と記載)。区画の外へ及ぶなら管理者に相談
うね立て湿害が心配なほ場でキャベツは10〜20cm程度(県資料)。区画内で検討できる範囲
地下排水弾丸暗きょ・心土破砕。サブソイラー等の機械で施工するため家庭菜園では対象外
傾斜均平レーザーレベラーで1,000分の1の傾斜(100mで高低差10cm)。家庭菜園では対象外
※ 県資料の数値は農業者が水田で野菜を作る場合のものです。「家庭菜園での考え方」の部分は当倶楽部の整理です。

家庭菜園へそのまま使えるのか

使えません。この手引きは主穀作農家が水田で野菜を作る場合の資料で、溝掘機やサブソイラーやレーザーレベラーといった機械を前提にしています。傾斜や間隔の数値は家庭の畑に持ち込めません。

資料は水田の土が畑の土より水を通しにくいことが多いとも説明しています。借りた畑がもともと水田だったかどうかで事情は変わるので畑の前身を管理者や地主に尋ねておくのも手がかりになります。

参考にできるのは水が溜まらない形にするという考え方までです。畝を高くして畝間の水の逃げ道をつなぎ水の通り道をふさがないことが具体的な形になります。地下水位は家庭菜園で測りにくい数字です。雨のあとに水が引くまでの時間を手がかりにします。高畝と排水溝の作り方は長雨の根腐れ対策の記事にあります。

市民農園では区画の外周に溝を掘ると通路や隣の区画へ水が流れ込むことがあります。共用の通路に手を入れる工事は独断で行わず管理者に尋ねてからにしてください。区画の中で畝を高くするだけでも規約で決まっている場合があります。

排水を整えれば根こぶ病は防げるのか

防ぎ切れるとは言えません。島根県の資料のとおり病原菌は被害を受けた根や土の中で数年間生き続けます。排水を良くすることは発生しやすい条件を減らす手段の一つで菌そのものを消す方法ではありません。

松戸の報道に登場した東京農業大学の後藤逸男名誉教授は水はけの改善のほかに連作を避けることや土の下層まで深く耕すことを挙げています。対策は一つに絞らず重ねる形で語られていました。

次の作付けに役立つ相談と振り返り

根こぶ病が心配なときの相談は作物名と植えた日と前作と症状の写真と雨の記録をそろえて持ち込むと話が早く進みます。

相談の前に何をそろえればいいのか

病気の相談では何をいつ植えて前に何を作りいつから症状が出たかが手がかりです。口頭で思い出すより手帳とスマホの写真を見せるほうが正確に伝わります。写真は先の撮り方と同じ2枚組で十分です。症状の出た株だけでなく隣の株の写真も添えると広がりが伝わります。

CHECK LIST 相談に持ち込むもの
1作物名と品種と植えた日
2同じ畝に植えていた前作(できれば過去3年分)
3症状が出た日と、広がった範囲を示す写真(全体・株元)
4雨のあとの水の引き方の記録(場所・時間)
5肥料や石灰をまいた日と種類
キャベツの畝のそばで雨のあとの畑の様子を手帳に書き込む手元

相談先はどこにあるのか

市民農園なら最初の相談先は農園の管理者です。共用の土や通路にかかわる話は管理者が判断します。

お住まいの地域の農業事務所(普及指導センター)やJAの営農相談は、栽培そのものの相談の窓口になります。家庭菜園の相談を受けつけているかは窓口ごとに違うので電話で先に尋ねてください。電話では写真を日付順にスマホのアルバムへまとめておくと答えやすくなります。

薬剤の種類や石灰の量は土の酸性度や作物によって変わります。家庭菜園で使える薬剤かどうかはラベルで決まります。自己判断でまく前に土壌診断で酸性度を調べて窓口の指示を仰いでください。

次の作付けでは何を見直すのか

見直しの出発点は同じ畝に何を続けて植えたかを記録から引き出せることです。後藤名誉教授が挙げたのは連作を避けることと水はけを良くすることと深く耕すことでした。土壌診断による酸性度の調整や病原菌を誘い込むおとり作物を植える方法もあると話しています。

島根県の資料では根こぶ病にかかりやすい作物としてハクサイ・カブ・キャベツ・ダイコンの順に挙がっています。同じ畝にこれらを続けて植えていないかを記録で調べられるようにしておきましょう。

雨のあとの記録は1年で終わらせず次の長雨の年に読み返します。「前の年に水が残った畝に今年はこの作物を植えない」といった決めごとは記録があって初めて立てられます。

これらの対策が自分の畑でどこまで効くかは土の状態を見た専門家でないと答えが出ません。治療効果を約束する話はここでは扱いません。

冒頭の肥料の話に戻ります。症状が出た日の水はけと雨の量が写真と一緒に残っていれば原因を切り分けるときの手がかりが一つ増えます。責める話ではありません。経験の長さと見分けのつきやすさは別の話だと受け取りました。

20年作った人が最初は見誤った病気を見た目で言い当てることはできません。それでも雨の翌日の1枚は残せます。

参考・出典
※ 本記事は2026年11月時点で公表されている資料にもとづいています。報道の内容は配信記事で確かめられた範囲に限ります。病気の診断・薬剤・石灰の量は専門家や窓口にご相談ください。
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