収穫前の果樹園の地面に置かれた空の木箱。農作物盗難は収穫期の直前に起きやすい

農作物盗難の検挙率は43.4%|2,201件のうち検挙は955件

2026年10月5日(月)

農作物盗難の検挙率は43.4%|2,201件のうち検挙は955件

農業コラム|農作物盗難

農作物盗難2,201件のうち検挙されたのは955件。令和3年に55.1%あった検挙率は43.4%まで下がりました。

SNSで「年間2,000件以上で検挙は半数ほど」という投稿が流れてきました。畑にいる人間には他人事でない数字です。警察庁の統計表と農林水産省の資料を自分で開いて確かめました。半数という言い方は正しく検挙率が窃盗全体より高いことも分かりました。それでも畑の側が安心できる形にはなっていません。

収穫前の果樹園の地面に置かれた空の木箱。農作物盗難は収穫期の直前に起きやすい

検挙率が半数以下と聞いたとき私は実際はもっと低いのだろうと思っていました。窃盗事件は捕まりにくいという印象があったからです。

警察庁の統計表を開くと令和6年の農作物盗難の検挙率は43.4%でした。窃盗犯全体の33.1%よりは高い数字です。見込みは半分外れました。

ただ過去の年に遡ると別の変化が出てきました。検挙された件数は3年で3割近く減り被害総額は2年で7割あまり増えています。件数や率だけを眺めていると取りこぼす動きです。

農作物盗難の検挙率は43.4% 令和6年の数字を読む

令和6年に警察が認知した農作物の窃盗は2,201件で検挙は955件でした。

警察庁の統計は被害品目ごとに件数を数えます。ここでいう農作物盗難は農作物が被害品目に含まれた窃盗の件数です。

検挙率は令和3年の55.1%から43.4%まで下がった

令和2年から6年までの5年分を並べると検挙率の落ち方が分かります。

図表1|農作物の窃盗 認知・検挙件数(令和2〜6年)
令和2年(2020年)認知2,789件|検挙1,357件|検挙率48.7%
令和3年(2021年)認知2,441件|検挙1,345件|検挙率55.1%
令和4年(2022年)認知2,194件|検挙1,081件|検挙率49.3%
令和5年(2023年)認知2,154件|検挙1,005件|検挙率46.7%
令和6年(2024年)認知2,201件|検挙955件|検挙率43.4%
出典:警察庁「犯罪統計」被害品別 認知・検挙件数(窃盗)。検挙率は検挙件数÷認知件数で計算しました。検挙件数には前年以前に認知した事件の検挙も含まれます。

認知件数は令和2年の2,789件から令和6年の2,201件へ2割ほど減りました。減ったのは犯行の側だけではありません。

検挙件数は令和3年の1,345件から令和6年の955件へ390件減り3割近く落ちています。令和3年から6年で認知件数は1割ほどしか減っていないのに検挙件数は3割近く減ったので検挙率が下がりました。

令和7年分の被害品別の検挙件数は2026年10月時点で警察庁の統計表に見当たりませんでした。農林水産省の資料では令和7年の認知件数は2,188件です。

窃盗犯全体の検挙率は33.1% 農作物は高いほうに入る

同じ令和6年の窃盗犯全体は認知が50万1,507件で検挙が16万6,049件でした。検挙率は33.1%です。農作物の43.4%はこれより10ポイントほど高くなります。

投稿の言う半数ほどは事実でも農作物だけが特別に捕まりにくいわけではありません。窃盗という犯罪そのものが捕まりにくい中に農作物も入っています。

それでも一年かけて育てた作物を盗まれた側にとって窃盗全体より高いことは慰めになりません。検挙率が下がる傾向にあることのほうが気がかりでした。

※ 被害品目別の集計は1件の事件につき最大3品目まで計上します。農作物の件数は農作物が被害に含まれた窃盗の件数で事件数そのものとは少しずれます。

農作物盗難は都市近郊に多く被害総額は2年で7割増えた

2025年の農作物盗難は全国で2,188件でした。被害総額は1億337万円で2年前の5,904万円から7割あまり増えています。

件数は横ばいなのに被害総額だけが増えた

被害総額は2021年の5,625万円から2023年の5,904万円まで6,000万円前後で動き2024年に1億53万円と1億円を超えました。2025年は1億337万円です。

図表2|農作物盗難の認知件数と被害総額(2021〜2025年)
2021年認知2,441件|被害総額5,625万円
2022年認知2,194件|被害総額6,104万円
2023年認知2,154件|被害総額5,904万円
2024年認知2,201件|被害総額1億53万円
2025年認知2,188件|被害総額1億337万円
出典:農林水産省「農作物の盗難の実態と対応策」(令和8年8月更新)。元データは警察庁「犯罪統計」。被害総額は農作物を含む被害品の合計額です。

その間に認知件数は2,441件から2,188件へ1割ほど減りました。件数が減っても総額は1.8倍になっています。

被害品は1件で3品までしか計上されないので総額は農作物以外の被害品も含みます。農作物だけの額ではなく1件あたりの被害が重くなったと断定はできません。件数が減る中で総額が増えたことだけは確かです。

被害は都市近郊に多い 埼玉と愛知が上位

農林水産省のパンフレットは農作物盗難が特に都市近郊で多い傾向にあると書いています。2025年の都道府県別の認知件数で上位に並ぶのは都市に近い県でした。

図表3|2025年の都道府県別 農作物盗難の認知件数
埼玉県128件
愛知県123件
大阪府111件
岐阜県104件
兵庫県102件
参考 北海道52件
参考 山梨県36件
出典:農林水産省「農作物の盗難の実態と対応策」(令和8年8月更新)。47都道府県の合計は2,188件です。

桃やぶどうの産地として知られる山梨県は36件で耕地面積が全国一の北海道でも52件でした。人や車の出入りが多い土地ほど狙われやすいのかもしれません。理由を示す資料は見つけられませんでした。

住宅地に近い畑ほど件数が多いなら家庭菜園や市民農園も無縁ではありません。ただ家庭菜園の被害だけを分けた統計は見つかりませんでした。

統計の1件はこういう畑で起きている

福岡県うきは市の梨農家は2026年7月16日から17日にかけて幸水の梨約5,000個を盗まれました。被害額は約200万円です。前の年にも約6,000個・約190万円の被害があり2年続けての被害でした。

収穫を待つ枝先の梨。収穫直前の果樹園は盗難の標的になりやすい

人感センサーと柵を設けていたと報じられています。農家は閉園を決めました。

栃木県佐野市では2026年8月5日にシャインマスカット約400房(約80万円)の被害が分かりました。果樹園には防犯カメラがなく7月25日夕方の最終確認から発覚までの間に持ち去られたとみられています。警察は窃盗事件として捜査しています。

どちらも統計では1件として数えられます。数字の向こうで畑ごとにこれだけの損失が起きています。

農作物盗難の検挙が進みにくい理由を畑の側から考える

農林水産省の聞き取りでは農作物盗難が起きた場所の48%がほ場で屋外の畑が中心でした。

この調査は平成30年度に被害認知件数の多い23道府県で実施されました。新聞等の情報と市町村やJAなど218機関への聞き取りをもとにしています。事案の件数は102件で今の統計と同じ尺度ではありません。

被害の48%はほ場 夜の畑には目撃者がいない

102件の事案を発生場所で分けるとほ場が48%・ビニールハウスが7%・作業場が3%・倉庫が2%でした。残る40%は場所が不明です。

畑は家から離れていることが多く夜は人通りがありません。収穫前の果実は誰が持ち出したかを後から示す手がかりも少ないと感じます。佐野市の果樹園のように防犯カメラがなければ犯人の姿は残りません。

解決済みは1割 地域の聞き取りに出た数字

同じ102件で事案が解決したかを見ると解決済みが11%で未解決が40%でした。残る49%は不明です。

警察庁の検挙率とは数え方が違い2018年度の古い調査でもあります。ただ未解決が解決済みの3倍を超える並びは農家が泣き寝入りという言葉で語られる背景を想像させる数字でした。

統計に載らない被害はどれだけあるか

警察庁の2,201件は警察が認知した事件です。届け出がなければ数字に入りません。届け出なかった被害がどれほどあるのかは公開資料で確認できませんでした。

農林水産省は被害が出たら警察に届けるとともに農作物盗難被害報告書を自治体かJAに出すよう呼びかけています。届け出は捜査の端緒になるだけでなく盗難の実態把握や地域の対策強化につながると書かれています。

先ほどの調査で被害金額が分かった事案は4割にとどまりました。実態をつかむことの難しさは数字にも表れています。被害額が小さいと捜査が後回しになるのかどうかは公開資料から確かめられませんでした。

検挙を待たずに地域と買い手と農家ができること

農作物盗難への備えは検挙を待たずに地域の見回りと盗品を買わない姿勢と農家自身の保険で進められます。

見回りと協定 長野県とうきは市の取り組み

長野県は果樹を中心とした盗難の防止を目的に7月から11月を「農作物盗難防止強化期間」としています。県警察と農政部と農協そして青色回転灯をつけた車でパトロールをするボランティア団体が合同で果樹園を回ります。

うきは市はうきは警察署とにじ農業協同組合と連携協定を結び防犯カメラの設置と合同パトロールを進めています。農林水産省のパンフレットはイチゴのハウスで防犯カメラと警告のステッカーを付けて以降は被害が出ていないという例も載せています。

先ほどの調査で盗難防止の対策が効果的かを尋ねた41の回答は「効果はあると思う」が39%で「盗難が減った」が7%でした。「効果はないと思う」はゼロですが「分からない」が54%と最も多くなっています。対策をしても被害が止まらない畑がうきは市の例のように現にあります。

盗品を買うことも犯罪になる

盗まれた農作物と知りながら運搬や保管をすることも有償で譲り受けることも有償での処分をあっせんすることも犯罪です。刑法第256条の第2項は10年以下の拘禁刑と50万円以下の罰金を定めています。

フリマサイトの運営会社も利用規約で盗品の出品を禁止しています。メルカリは違反の通報や疑いを検知した場合に出品者への問い合わせや現地調査をして出品の削除や利用停止をすると説明しています。

相場より極端に安い果物を見かけたときの見分けかたは盗まれた作物が市場に流通する現実と防犯策に書きました。ただ安いだけで盗品とは決められません。規格外の果物を農家が自分で安く売ることもあります。個人を名指しして拡散するのは避け運営や警察への通報にとどめてください。

! 安い出品を見つけたときは拡散より通報を
盗品かどうかは外から見て断定できません。疑いが残るときは出品先の運営への報告か警察への相談で伝えてください。名指しの拡散は無関係の生産者を傷つけ書いた側も責任を問われかねません。

農家なら収入保険で盗難に備えられる

収入保険は盗難を含め農業者の経営努力では避けられない収入の減少を広く補償する制度です。

加入できるのは青色申告をしている農業者で補償の対象は自分で作った農産物の販売収入全体です。保険期間の収入が基準収入の9割を下回ったときに下回った額の9割を上限として補塡されます。

販売収入が対象なので販売しない家庭菜園は加入の対象になりません。盗難で収入が減った農家は日本政策金融公庫の農林漁業セーフティネット資金を使える場合もあります。

家庭菜園・市民農園で農作物盗難から畑を守る方法

家庭菜園でできる農作物盗難の対策は収穫物と道具を畑に置いたままにしないことと人の目と灯りを畑に足すことです。農林水産省のパンフレットの項目を家庭菜園の広さに合わせて読み替えました。

収穫物と道具を畑に置いて帰らない

農林水産省は収穫物を畑に放置せず持ち帰ることを最初に挙げています。収穫用のコンテナや脚立も盗みに使われないよう畑からこまめに撤収します。小屋や倉庫は窓と出入口の施錠を徹底します。

収穫したきゅうりとトマトのコンテナを両手で運び作業小屋へ持ち帰る手元

収穫したその日に屋内へ運ぶだけで置き場所を狙われる心配が減ります。熟すまで待ちたい野菜はあっても採ったものを畑に置いて帰る理由はありません。

畑に手をかけている人がいることが外から分かる工夫も紹介されています。作業者は腕章を付け農作業の車にはステッカーで目印を付けます。侵入者を見分けるための方法です。

市民農園の区画で実をつけたミニトマトと名札を挿す前の木の杭

市民農園なら区画に名札を立てて管理されている畑だと分かるようにします。隣の区画の人と連絡先を交換しておくと見慣れない車や人を見かけたときに知らせ合えます。

畑に灯りと目を足す

ネットや柵で入りにくくし「防犯カメラ作動中」「盗難防止警戒中」の看板やステッカーを出します。センサーライトとカメラも農林水産省が挙げる対策です。

電源のない畑ならソーラー式のセンサーライトが付けられます。道路に面した側や出入口に向けると暗くて静かという盗む側の前提が崩れます。

家庭菜園の畝の端に立てた木杭に付けたソーラー式センサーライト

機材を入れても被害が止まらないことは先に書いたとおりです。設備は入られない保証ではなく抑止と証拠のために置きます。費用の低い順に積む手順は畑の防犯を数百円からできることの項目にまとめています。畑の道具そのものの置き方や代用品は畑の道具の代用できるもの・買うものでも触れました。

家庭菜園の野菜が盗まれたら被害届は出せる?

野菜が盗まれたときも窃盗に当たります。最寄りの警察署か交番に被害を届け出てください。農林水産省は農家向けに速やかに最寄りの警察へ届け出ることを呼びかけています。

届け出るときは気づいた日時と盗まれた品目と数と畑の場所を話せるように用意します。荒らされた箇所の写真も撮っておくと伝わります。足跡やタイヤ痕が残っていたら片づける前に写してください。

市民農園なら管理者にも知らせます。農家は農作物盗難被害報告書を自治体かJAに出す流れがあり農林水産省がWord形式の書式を公開しています。

冒頭に書いたとおり私は検挙率はもっと低いものと思い込んでいました。実際は窃盗全体より高く。それでも検挙された件数は3年で3割近く減っていました。数字は思い込みを直してくれます。収穫の前に畑へ足を運ぶ回数を増やすところから今年も始めます。

参考・出典
※ 本記事は2026年10月時点で公表されている資料にもとづいています。農林水産省の調査(平成30年度)は新聞等と市町村・JA等への聞き取りで実施され警察庁の統計とは数え方が異なります。
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